一般社団法人元気ジャパンのナベケンこと渡邉賢一さんから教えてもらったんだけど、海外で盆栽がブームになっているらしい。それでいろいろ調べてみた。読売新聞によると、1970年の大阪万博をきっかけに欧米で愛好家が増え、高松市が熱心に取り組み続けたこともあり、2006年に23億円だった植木や盆栽などの輸出額は、2012年には81億円と3.5倍に拡大したという。

 産経新聞によると2001年から2011年の10年間で盆栽と庭木を合わせた輸出額は約10倍になったという。主な輸出先は中国、イタリア、オランダ、米国。アジアでは高額な盆栽の富裕層のステータスシンボル、欧米では簡易な盆栽がインテリアとして受け入れられているようだ。

日本人は日本のすばらしさに気づいていない

日本貿易振興機構(ジェトロ)がイタリア・ベルビーで行った盆栽輸出可能性調査のインタビューに答えているイタリアの輸入業者クレスピ・ボンサイのルーカ・クレスピ氏によると、盆栽のすばらしさは西洋人の心に直接響くのだという。同氏は「歌舞伎などは(理解するのに)時間がかかるし知識が必要。一方、盆栽は若い人、老人、子供が、見ただけで、声をなくすほど感動する」と話している。

 ただ一方で日本の生産者との間に双方向の対話が存在しないことを残念がる。「日本の盆栽業界が輸出に対して真面目に取り組んでいるようには思えない。生産者は海外市場でどのようなものが望まれているのか、どのような種類、サイズ、タイプがいいのか知らないし知ろうともしない。30年間、日本の生産者でイタリアの弊社を訪れてきたところは1社もない」と話す。

 生産業者だけではない。日本人のほとんどが世界に与える日本文化の価値を理解していないと同氏は語る。「いつも残念に思うのは、日本では盆栽の価値を評価していないようだ。日本人は大切に思っていない。日本政府も行政も盆栽を重視していない。しかし、西洋人にとっては、特に若い人にとって盆栽は大変重要で心に直接響くものである。(中略)盆栽が大事にされていない。日本にとって盆栽輸出の市場価値や金額価値は小さいのだろうが、日本にとっての文化価値は大きい。日本は観光でも文化でもあれほど素晴らしい国なのにPRもない。日本人はその価値を知っていないのではないか」。

世界に最もいい影響を与える国

20世紀後半は、自動車、家電に代表される日本のテクノロジー産業に世界の評価が高まった。テクノロジー産業に対する評価は一時に比べて下降気味かもしれないが、一方で日本の文化や精神性の評価は高まる一方だ。

英国のBBC放送が22カ国2万4000人を対象に毎年行なっている意識調査によると、2012年は「世界に最もいい影響を与えている国」として日本が首位になった。2012年以外で日本は4位前後が多く、東北大震災の際に暴動や略奪などが一切発生せず、日本人が一丸となって復興に取り組んでいる姿が評価されたのかもしれない。 スクリーンショット 2013-08-04 9.44.23

7月22日にさいたま市のJR南浦和駅でホームと車両の間に落ちた女性を救出するため駅員や乗客らが力を合わせて車両を押したニュースは、世界を駆け巡った。読売新聞によると、米CNNテレビは「日本から素晴らしいニュースです」と絶賛。8分後に通常運転が再開されたことは「恐らく日本だけで起こりうること」と高く評価。英ガーディアン紙は「集団で英雄的な行動」、タイのニュースチャンネルTNNは「日本の人々が生来の結束力を余すところなく示し、困っている人に助けの手をさしのべた、素晴らしいニュース」と紹介したという。

 日本の精神性や文化に対し世界から高い評価を受け始めた。恐らくこれは「日本ブーム」という一過性のものではなく21世紀の大きな潮流になるのではないかと思う。なぜなら4半期ごとの決算に一喜一憂する行き過ぎ金融・資本主義に対する反省から、より内面的な精神的な豊かさを求める機運が高まっているからだ。

 その辺りの考察は、拙著「未来予測 ―ITの次に見える未来、価値観の激変と直感への回帰」に書いた通り。

 効率と低価格、生産性を追求した大量生産商品よりも、こだわりを持った製品に人気が集まり始めたことも、Apple製品の人気の高まりを見ても明らかだ。Appleのスティーブ・ジョブズは禅を勉強していたことは有名だし、Appleこそ日本文化のすばらしさを受け継いでいるといわれている。

 日本の精神性・文化を取り入れた製品・サービスは盆栽以外にも数多く存在するはず。またまだ大きくヒットしていなくても海外のニーズ・要望を取り入れれば大ヒットにつながる可能性を秘めている製品・サービスも数多く存在するのではないだろうか。

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