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最近ハッカソンって多いけど、使われるものって作られてるの?

わたし自身、いろいろなテック系イベントの裏方や事務局をやっているので、自戒を込めてこの記事を書いています。

イベント自体は、ほとんどのイベントが非常に楽しいんです。また学びもたくさんあります。何よりかけがえのない仲間ができます。確かにイベントで作ったサービスやアプリがそのまま製品になることはまずないですが、熱い思いで仲間と一緒に作ったという経験や、その場で得た気付きが、その後の仕事に必ず生きてくるのだと思います。

そうした価値を十分に認めた上で、あえて提言したいんです。われわれテクノロジー側の人間って、もっともっと一般の人たちの側に立って物事を考えることからスタートすべきなんじゃないかって。

そう感じたきっかけとなったイベントについてリポートします。Studio-Lという決してテック系ではないけれど、住民目線で問題解決を繰り返してきた集団とコラボすることで、われわれテック側にとって大きな学びがあったんです。

半年前の話になってしまいますが、8月13日(火)〜15日(木)の3日間で、コミュニティデザイン事務所「Studio-L」と、TheWaveの有志の合計約30名で2泊3日の合宿を行いました。今回の合宿のテーマは「出郷者の課題を解決する」。テクノロジーに詳しいTheWaveのコミュニティメンバーの中でも、地方活性化、地域の課題に興味があるメンバーが集まって実施されました。

出郷者とは、「故郷を離れ、他の地へ行った者」です。
高校・大学への進学を理由に故郷を離れる就学移住者は2011年には3人に1人、そして就職を理由に故郷を離れている地方出身者は5人に1人もいます。(※国立社会保障、人口問題研究所「第7回人口移動調査より)故郷を離れざるを得ない人々は多く、10年以内に消滅する可能性のある集落は423もあるそうです。(出典:国土形成計画策定のための集落の状況に関する現状把握)

出郷者の課題とは
・故郷へ戻りたいけれど故郷に仕事がない
・都心から故郷を応援したいがその仕方がわからない
など様々あります。今回のワークショップは、どんな問題に対し、どんな解決案をだすのか、という問題を考えるところを含めてのアイデアソン・ワークショップとなりました。そのレポートをお送りしたいと思います。


■合宿の背景とはじまり

今回の合宿のはじまりは、TheWave湯川塾の15期「すべてのビジネスはコミュニティがベースになるー21世紀型コミュニティの本質をつかむ」に、Studio-Lの山崎亮さんと西上ありささんに講師としてきていただいたことから始まりました。その塾で学んだことは、一部記事「日本の活路は、テックx田舎にあり」になっているのでそちらも参照してみてください。

街作りのプロ集団であるStudio-Lさんにはテクノロジーに関して可能性は感じているものの苦手意識があり、TheWaveにはもっと街作りの現場を知りたいというニーズがありました。
その二つがかけ合わさった時・・・新しいことができるのではないか?そんな両者の想いから、一緒に合宿しようということになりました。
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まず初日は、Studio-L、TheWaveそれぞれから事例紹介と全員の一言自己紹介。お互いの專門領域の把握と違う視点での情報をインプットすることで、今回のテーマに対する理解を深めました。
そして夜は、Studio-LとTheWaveの各コミュニティから一人づつの2人ペアを作ってテーマによるディスカッション、というメニューから合宿はスタートしました。

■Studio-LとTheWaveからの事例紹介

Studio-Lからは「Studio-L IGA」の責任者である西上さんから、TheWave側からは、sinsai.infoなどを立ち上げた関さんからお話いただきました。

●コミュニティデザイナーとして関わった事例紹介
西上さんからは、Studio-Lの紹介と、Studio-Lとして手がけた「海士町総合振興計画」についてお話しいただきました。海士町総合振興計画は、生活者の視点からの課題を抽出し、24の「まちづくり具体案」を掲載している絵本のような冊子を作成。各具体案は①1人でできること②10人でできること③100人ででできること③1000人でできることに分かれています。
・集落診断、集落支援のプロジェクト
親子健康手帳
・人々との出会いを楽しむ旅のガイドブック CommunityTravelGuide「海士人」の出版
などの事例を紹介していただきました。
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●まちづくりに活用されるITについて
関さんから、「まちづくりに活用されるIT」について以下の3つについてお話いただきました。
①オープンソースコミュニティが世界を変えているという事例:sinsai.infoWhere Does My Money Goなど
②ITのまちづくりへの活用事例:OpenStreetMapの愛好家たちが実施しているマッピングパーティ、wheelmapFixMyStreetneighborlandなど
③現在活動しているCode for Japanの取り組みについて
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各発表の詳細については、また別の記事で紹介できたらいいなと思っております。

■ワークショップ(アイデアソン)

チームは5チーム作られました。「なぜこの合宿に参加しようと思ったのか?」という問題意識を含めた自己紹介をし、ペアを組みたい人を3名まで入力します。(これにより、自己紹介を真剣に聞く効果があります) 。その希望をもとに、事務局の方で勝手にペアを決めました。

●ペアでのディスカッション
IMG_9783 IMG_9840 そして発表
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自分たちの会話の中ででたキーワードをgoogledocに記入し、似た考えをもっているペアが合体し、合計で5チームができました。2日目からは、そのチームでのグループワークになります。

●グループワーク
グループワーク初日は、アイスブレイク(集まった人を和ませ、コミュニケーションをとりやすい雰囲気を作り)から。
一人一人が「趣味、役割、お金、故郷、家族、友達、健康」の7枚のカードをもち、じゃんけんで負けた人が一枚づつカードを破っていきます。何を破るのか?は同時に何を残したいのか?も選ぶことになります。ゲームがおわったら、チームで何から破ったのか?なぜ最後までそのカードを残したか?など話し合い、その人が大切にしている価値観について話すきっかけとなりました。
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場が温まったら、あとは黙々と作業に入ります。
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でも、ご飯はリラックスムード。
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作業は夜中まで続きます。
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■発表

さて、最終日は各チームで出されたアイデアの発表になります。全ての発表はYoutubeで見ることができますので、気になった発表があれば是非みてください。

【一班:Cheers】
応援したい地域のいろいろを、いろんな形で応援できるサービス。まずは海士町か武雄市で始め、実績を残したい。例えば、海士町のCheersページでは、海士町に貢献したい人が、貢献できる内容を登録できる。それは、
 ・海士町のさざえカレーを購入します
 ・WEBページデザイン作ります
 ・友達を旅行につれていきます
 ・東京のおいしいもの送ります
でもなんでもいい。実際にアクションするとありがとうポイントがたまり、ポイントがたまると海士町で余っている野菜などをおすそわけされたりもする。誰が応援しているのか、顔が見えるようにもする。また、海士町のことを「知る」機能もあり、帰りたい気持ちも仰ぐ。「海士町の今」の情報(お悔やみ情報)や、暮らしをイメージする情報(生活算出シュミレーション機能)や、同郷人の今を知る機能(同窓会支援など)など。
http://www.youtube.com/watch?v=98X9N7ADyHw 


【二班:戻ってきて!!地域のサーモンたち!!】
海士町は地元にいる間(就学や就職で都会に行く前)に地元の良さをわかってもらうことで4人に3人が戻ってきたいと思わせました。「戻ってきて!地域のサーモンたち!!」は地元を離れてからも、地元の楽しく懐かしい故郷の情報を発信し、思い出してもらうきっかけを作り、出郷者に地元に戻りたいと思ってもらおうというサービス。
ただ、情報発信するだけではなく、その情報をうけとる受信者の間でイベントを実施していく仕掛けもつくります。例えば、「同窓会」、「地元でのインターンシップ」、「街おこしイベント」など。イベントを通じてコミュニティができ、コミュニティへの愛着が遠方にある懐かしき故郷への新しい行動へとつながります。また、仲間がができることで、その行動に勇気を与えると考えます。
http://www.youtube.com/watch?v=heluLYIuhkA

【三班:くう・ねる・あそ部
 地元に帰ってきた人、そして帰りたいと思っている人の集まる場所がない。そして故郷のことを知る機会がない。こうした問題を解決する活動。「おたんばアジト」という運営拠点を作り、そこで運営事務局が外の人が羨むような活動(育児×おじいちゃんおばあちゃんの支援、野菜作り等)をしていき、地元の人が集まる場を作ると同時に、毎週月曜はアジトから地元に関する楽しそうな情報をネットで発信していく。(都会では月曜日が一番憂鬱な日だと思うので、憂鬱な日を狙って楽しい情報を発信)。
また、出郷者とつながる施策も準備。帰りたいと思っている人に東京支部、大阪支部、福岡支部に集合してもらい、月曜のネット発信の際にはgoogleハングアウトで各地と中継し、コミュニケーションもとっていきます。各地の集まる場所にはあらかじめ地元の食材を送っておき、地元の料理を食べながら、地元のことを話す「場」となり、帰りたいと思っている人の集まる場になります。そして、出郷者の人が情報を拡散してくれたり、里帰りしてくれたりしたら、おたんばギフトという独自通貨が発行され、地元に帰ってきたときに利用できます。
http://www.youtube.com/watch?v=WvSc0P_piGA

【四班:TRAGEL QUEST】
課題そのものや解決プロセスを可視化し、出郷者や住民による相互解決を目指すクエスト型の課題解決サービス。まず、地元住民が中心になって課題を集め、地元住民と出郷者でクエストを作り進めていきます。進めていく際にはサポータやファンというオンラインでの参加方法もあります。
ただ、地域の課題抽出はオンラインで募集するだけだとなかなか集まらないので、フォールドワークやワークショップなどアナログなイベントを平行して実施。課題についての意見や投票を募ることで、課題の重要性が可視化され、クエストとなっていきます。クエストをクリアするとバッジがもらたりと、ゲーム性も多分に活用します。
http://www.youtube.com/watch?v=kzuUX2-V3U0

【五班:故郷のおしごと相談会 by DAMAチーム】
ローカルキャリアアドバイザーの横田いたるへ相談ができるサービス。90分の間、とにかく横田にヒアリングをうけ、相談者のしたいことをしっかりと聞き込みます。そうすると、横田から「現実的にここから始めよう」というやんわりした強制的な約束をされ、背中を後押しされます。
そしてこの相談はオンラインで公開され、見ている人も自分のことのように後押しされたりします。 大切なのは「完成度ではなく、みんなで考えることによる背中の後押し」なんか俺いけるかもという気持ちを作り上げます。
http://www.youtube.com/watch?v=MLuALMeiSps

■まとめ

今回の発表で一番印象に残ったのは、「TRAGEL QUEST」に対するStudio-Lさん側からの感想でした。TRAGEL QUESTのドラクエ風な演出について、「田舎のおじいちゃんおばあちゃんはとてもシャイ。ドラクエっていう言葉がでた時点で自分とは関係のないものと思われ、聞いてももらえないだろう」という感想でした。
ドラクエ風に見立てた演出は、スタートアップやアーリーアダプタなどの作り手が好きそうなやり方ではあるのですが、反対に受け手である地域の人たちにはなじみのないやり方なのです。それは、地域の人達と接していないと気付けない感想だと感じました。

テクノロジーで解決できる問題はまだまだあると思っています。が、一方でテクノロジーを扱える人達は扱えない人達の立場にたって考えることが苦手のようにも思います。テクノロジーを扱える人達が欲しいと思うものではなく、扱えない人達でも理解し利用できるものを、テクノロジーという手段を使って解決していけたら、もっと多くの人がテクノロジーの恩恵に授かることができるのになっと思います。

そういった動きは海外では活発で、「Code for America」というNPO団体が実績をあげています。「Code for America」とは、公共のサービスを改善するために優秀なITエンジニアを市、州、国などの自治体に派遣し、自治体が抱えている課題を解決するサービス(アプリ)を開発するサービスを提供している団体です。
例えば、「HONOLULU ANSWERS」は、ハワイ州のホノルルで提供されている免許の取得方法などFAQをシンプルかつ的確に提供するサービスです。自治体のサイトの多くは、どこにどの情報が載っているのかわからず、欲しい情報になかなかたどりつけません。そこで、ユーザ視点に立ったUI/UXの改善で問題を解決したのです。また、市民が情報の載せる事も可能にし、市民一人一人が協力することで随時情報が更新される上に、集約的に情報更新などを行う場合とは違いコストもゼロにしました。

現在、ハッカソンがよく行われていますが、IT関係者が集まり、IT関係者が考える(想像する)問題に対して解決するプロダクトを作っているにすぎないようにも感じます。というのは、一般の人に使ってもらえるようなサービスが作られていない気がするからです。 使われるサービスを作るためには、問題を感じている本人か、もしくはその問題を理解している人(地域問題であればStudio-Lさんのようなコミュニティデザインの人たち)が一緒になって行うことが不可欠なのだと思います。

私はテクノロジーは手段であって、目的であってはいけない。あくまでも解決したい課題が最初にきて、そのためにテクノロジーを使うようにしなくてはいけない。と思っています。そのためには
 ・解決したい課題をテーマにしたアイデアソン、ハッカソンが行われること
 ・問題を本当に感じている人が参加すること
がとても重要なのだと思います。
ハッカソンでは、その場で作られるサービスではなく、その場での経験や気づき・人とのつながりが重要だと思っています。同じテーマに関心のある違う立場の人たちとつながることなどで、次のプロジェクトにつながる可能性を秘めているのだと思います。

技術で世界を変えるというと、googleのような大きなサービス、今までにない革新的なサービスを考えるかもしれません。しかし、こういった市民の小さな問題を解決していくことも、技術で世界を変えている一つの事例と思います。
新しいサービスを作らなくても、先ほど述べた事例のようにUI/UXの改善でもいいのだと思います。まずは、住民も参加するような枠組み、そして次のステップは住民に使ってもらい参画するような設計になっているハッカソンが実施できるといいなと思います。
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住民参加のイベントも全国で多数あります。そういった住民参加型のイベントででた課題の中には、テクノロジーがあることで解決できる問題もあるはずです。住民参加型のイベントででた課題を解決するためのハッカソンイベント、というコンテキストでのハッカソンが実施されると使われるものが作られる気がします。

ただ、形にすること、可視化されることはとても重要で、使ってみて初めてわかること、可視化してはじめて気付くことも多くあります。短期間で動くものが作られるハッカソンはすばらしいと思います。だからこそ、ハッカソンのいいところと、住民参加がうまく組み合っていくイベント設計ができたらいいなと思うのです。

いい素材があってもいい料理人がいなければ、おいしい料理はできません。ただ、おいしく料理を召し上がっていただくには、食べていただくお客様の食べられるものを提供しなければと思うのです。
料理人が美味しいと思う自己満足なものを提供するのではなく、お客様に美味しいといってもらえる料理を提供できる料理人が真の料理人だと思うのです。

今回の合宿で気づいたことは、発表している人はTheWaveのひとばかりでした。TheWaveは比較的「ひっぱっていく人」が多いのだと思います。ただ、私が感じたのは、TheWaveの人は、Studio-Lの人に気持ちよく発表させてもらっていたのではないのか?と。
Studio-Lさんの仕事は、地域の人達を主役にし、いかに自分たち(地域の人)の力だけで継続的にプロジェクトを実行していくか。一方でTheWave側の人達はいかに推進していくのか。自分の力ですすんでいくのか。を強みとしている人が多い気がします。

最後にStuido-LとTheWaveと別々にお互いの学んだことについて話しをした中で、TheWave側の多くの人が口にしたことは「現場の意見を聞ききれていない」という言葉でした。

TheWaveの事務局として、今回の合宿を企画した一つの目的としては、「現場を知る」ということでしたが、TheWave側の人達が現場のヒアリングができていないことを、ここまで理解していないことに個人的にびっくりしました。(ヒアリングできていないことではなく、どれほどできていないのか理解していないこと)
「理解すること」はとても大切だと思うので、それだけでも今回の合宿の成果はあったのかなっと思います。

最後はみんなで集合写真。しまのわのポーズで!
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お疲れさまでした!




 蛇足 ━━━━━━━
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鈴木まなみ

私は先日までMashupAwardsというイベントのお手伝いをしていました。このイベントをお手伝いしている理由は、クリエイティビティは大切だと思い、クリエターのチャンスを創出したいというイベント主催者の思いに共感したからです。(事業性よりクリエイティビティでしょ。MashupAwardsっておもしろいよ)。ただ、クリエイター達の入門イベントとして意義があると思う一方で、本質的には継続して使われるもの、プロダクトアウトではなくマーケットインのサービスが作られるべきであり、ただ作るだけ、作られたものの使われないサービスが多いことに寂しい気持ちがあるのも真実です。


今年のMashupAwards9は、様々な部門賞を設けることで、今までとは違ったタイプの作品が評価されるようになりました。(モノづくりを楽しむ集団MashupAwardsとマッシュアップしようよ!)その中で私が注目した部門賞は「シビックハック賞」でした。 この、Code for Americaの日本版であるCode for Japanが審査をつとめたシビックハック賞は「地域課題解決を目的とした市民サービスより選出」された賞です。この賞があることで、テクノロジーのための作品だけではなく、地域課題解決のために作られる作品が多数応募されました。シビックハック賞のFinal作品に関してはこちらの公式ブログを参照ください。 →【MA9シビックハック賞レポート10/31

また、今回の合宿のご縁をきっかけに、名古屋でのシビックハッカソンでは、Studio-Lさんに講演をしていただいたりもしました。 


Code for Americの日本版であるCode for Japanはまだ始まったばかりですが、テクノロジーが目的ではなく、手段として機能していくような形ですすめられたらいいなっと思い、私も少し参加しています。

もしも、そのようなことに興味のある方は、こちらのFBグループに参加してみてください。


また、TheWaveとしてもおもしろい取り組みがあればどんどん取り組んでいきたいと思っています。この記事に共感された方、TheWaveと合同合宿してみたいという方は私(rin2treeあっとまーくgmail.com)までご連絡いただけますと嬉しいです。

TheWaveとのコラボだけでなく、MashupAwardsとコラボでも、Code for Japanとコラボでも、どれでも相談にのります。