Google Glassに代表されるメガネ型ウエアラブル機器は、いかにも未来的でわくわくするものの、「今の価格、今の機能、今のデザインでは、あまり普及しない」という声も聞こえてくる。メガネ型ウエアラブルは時期尚早なのだろうか。今後どんな機能が充実してくれば、普及するのだろう。そしてその時期はいつになるのだろうか。


★B向けでは既に利用がかなり進んでいるらしい

実際には、B向けのメガネ型ウエアラブルは既に成立している。メガネ型ウエアラブル專門のシステムインテグレーターである米Vuzixの関係者によると、航空業界や石油業界などでメガネ型ウエアラブル機器の導入ケースが急増しているという。

こうした業界の企業にとって、どのようなシステムを導入するかがその企業の競争力を左右する。なのでほとんどの企業は、メガネ型ウエアラブル導入の事実を公開したがらない。なのであまり公に語られることは少ないが、①取り扱う機械が複雑、②なので專門が細かく分かれていて専門家が少ない、③操業停止が膨大な損失になる、というような条件の業界では、メガネ型ウエアラブルの導入が進んでいるという。

例えば、航空機の場合、使用されている部品数は中小型機で100万個、大型機になると600万個になるといわれている。どのネジをどこに使うか、などの細かなルールが無数に存在する。しかもネジとボルトの組み合わせを1つでも間違えれば、航空機事故という大惨事につながりかねない。

分厚い設計図やパソコンを見ながら、修理をするのも大変な話。そこで設計図をメガネのディスプレイ上に映し出しながら作業をすることが、航空機業界では増えてきているのだという。

また石油会社の石油採掘現場で機械が故障した場合、專門の修理工がその場にいればいいが、いない場合、專門の修理工が駆けつけるまで操業を停止しなければならない。数時間停止するだけで何億円単位の損失になる。なので、その場にいる修理工が、故障した部分の映像をメガネ型ウエアラブル機器でストリーミングしながら、遠隔地の専門家のアドバイスを受けて修理する、ということをやっているようだ。


★組み立て方を実演 工場や教育向けに期待

こうした工場やシステムの現場でメガネ型ウエアラブル機器を使用する際に、威力を発揮するのがAR(拡張現実)技術だ。

目の前にある部品が何であるのかを認識し、その部品に関する情報を表示する技術だ。メガネ型ウエアラブルを装着すると、目の前の空間に、実際には存在しないモノが投影される。現実空間と仮想空間を合体させるような技術だ。

先日、米カリフォルニア州で開催された業界見本市Augmented World Expoでは、エプソンのメガネ型ウエアラブルMoverio(モベリオ) BT-200 3D glassesに、ARソフトScopeを搭載し、レゴブロックの組み立て方を説明したデモが人気を呼んでいたようだ。

そのときの動画はないが、Scope社作成の動画(英語)のリンクを下に貼り付けておこう。雰囲気はつかめるはずだ。

scope augmented reality training system


メガネ型ウエアラブルが目の前の機械を認識すると、どのネジを回せば部品を交換できるのかなどのインストラクションがアニメで表示される。このインストラクションに従って作業するば、機械の分解、組み立てが素人でも簡単にできるようになっている。

エプソンのMoverio(モベリオ) BT-200 3D glassesの詳細については、以下の動画(日本語)が詳しい。



Scopeのような技術がさらに進歩しメガネ型ウエアラブルの価格が下がっていけば、より多くの領域で、教育、訓練用にメガネ型ウエアラブルが普及していくことだろう。


★米軍の技術が民間に 街中でも利用可能に

B向けや特定領域向けには、メガネ型ウエアラブルがある程度、普及し始めたことは分かった。ではC向けにはどうなんだろう。

ウエアラブルコンピューターが最初にマスコミで取り上げられるようになったころ、メガネ型ウエアラブルは歩行者ナビになると盛んに言われたことがある。左に曲がるべきコーナーのところに目をやれば、左に矢印が表示される。目的地のビルを探して周りを見渡せば、そのビルが分かりやすく反転表示される。そんなことができるようになる、と言われたものだ。AR技術が街中でも完璧に機能するようになると思われていたわけだ。

ただ今のところ、GPSもそれほど精度がいいわけではない。自分自身の現在地でさえ正確に把握できないことは、スマートフォンの地図を使ったことのある人ならだれでも知っていることだ。この使い勝手のままメガネ型ウエアラブルで歩行者ナビを利用しても、目的地のビルが的確に反転表示させる、などといったことはできそうにない。

しかし、現在地やユーザーが見ている方向を正確に把握する技術が加速する可能性が出てきた。米軍で開発されたAR技術の民間転用が始まったからだ。

米軍が開発したのはARC4と呼ばれるソフトウエアで、これをゴーグル型ウエアラブルに搭載すると、兵士は霧や建物で視界がブロックされている状態でも、敵の兵士や、タンク、飛行機などの位置を半透明なアイコンとして見ることができるという。

米紙AtlanticがARC4の開発者チームにインタビューした記事によると、最も開発が難しかったのは兵士がどの方向を向いているか認識するということだった。なぜなら方位計は電磁場の影響で簡単に狂ってしまうからだ。タンクの横に立っているだけでタンクが作り出す電磁場の影響を受け、ゴーグル型ウエアラブルの方位計が狂ってしまうのだという。

そこで幾つかの仕組みが取り入れられている。まず、最初に大きな山、大きな教会などの目印の位置情報を把握しておいて、その目印をゴーグルのカメラが捉えることで、どの方角を向いているのかを認識するという仕組みを採用した。また太陽がカメラのレンズの中のどの位置に見えるかで、正面がどの方向なのかを瞬時に計算する仕組みにもなっているという。そのほか飛行機から地上向けにレーザー光を送り、それが建物に当たって反射し戻ってくるまでの時間を基に、建物の高さを計算。この方法で街全体を3Dスキャンして、その3Dデータと兵士のゴーグルのカメラが捉える風景と照合することで、兵士が向いている方向を認識するという仕組みにもなっているという。

米軍の研究機関であるDARPAとともにこのAR技術を開発したApplied Research Associates (ARA)社が、この技術の民間転用を推進し始めた。自分たちでハードウェアまで開発するのではなく、あくまでもソフトウエア部分だけをライセンス提供していく考え。兵士向けに開発された技術を消費者向けに転用するには、デザインや価格などの面でまだまだ課題がありそうだが、メガネ型ウエアラブルを使って完璧な歩行者ナビが実現する日もそう遠くなさそうだ。



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