米Googleが開催した開発者向け年次総会「Google i/o」。今回はスマートグラス(メガネ型ウエアラブルコンピューター)Google Glassの話題はほとんどなく、代わりにスマートウォッチ(腕時計型ウエアラブル)の基本ソフト(OS)「Android Wear」に注目が集まった。競合Appleも今秋に時計型ウエアラブル「iWatch(仮)」を発表してくることがほぼ確実とみられており、本格ウエアラブルコンピューター時代はまずはスマートウォッチの普及で幕を開けることになりそうだ。

パソコン時代からスマートフォン時代に移行したときにソフト業界の勢力図が塗り替えられたように、これから始まるウエアラブル時代もシェア争いが「ふりだし」に戻るものとみられている。ただパソコン向けの画面デザインをスマホ向けに小さくしただけでのソフトがことごとく敗退していったように、スマートウォッチにはスマートウォッチに合ったデザインを作らなければならなくなる。どのようなことに気をつけてアプリを開発しなけばならないのだろう。Googleが開発者向けにスマートウォッチアプリ開発のポイントをまとめている。このポイントはAppleのiWatch向けアプリ開発にも当てはまるものなので、少し詳しく考えてみよう。

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★スワイプと音声でスマートウォッチを操作

まずGoogleのスマートウォッチでは、1つの画面に収まる情報のことを「カード」と名称で呼んでいる。パソコンでは一度のアクセスで表示されるウェブ上の情報をウェブ「ページ」と呼んだが、ページより圧倒的に情報量が少ないので「カード」と呼んでいるのだろう。

次の予定の「カード」、天気予報の「カード」、メッセージ通知の「カード」など、いろいろな「カード」があり、上にスワイプすることで、「カード」を次々とめくることができるデザインになっている。また見終わって不要なカードは左にスワイプすることで削除され、右にスワイプするとより詳しい情報のカードや関連するアクションのカードが表示される。

こうしたスワイプに加え、音声コマンドが、Android Wearを搭載したスマートウォッチの主な操作方法になる。スマートウォッチに向かって「今日の東京の天気は?」「会社に電話をかけて」などと発生すると、音声と文字で対応してくれるようになっている。

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★今、ここで必要な情報が、自動的に表示される

さてこうした操作方法のスマートウォッチには、どのようなアプリが向いているのだろうか。アプリの使い勝手をどうデザインすればいいんだろう。Googleの開発者向けサイトでは次の4つポイントに注意すべきだと解説している。

1つ目のポイントは、ユーザーの今の場所、行動、状況を把握し、それらに最適の情報やサービスを提供すること。ちょっと難しい表現だと「コンテキスト(文脈)を考えなければならない」ということだ。

スマートフォンは、画面をスワイプして自分で必要なアプリを探し出し、立ち上げて、操作する必要がある。しかしスマートウォッチの小さな画面を操作して、無数のカードの中から必要なカードを探し出すのは、非常に手間がかかる。なので、ユーザーの今の場所、行動、状況を把握して、必要なカードを自動的に表示するような使い勝手が求められるわけだ。

例えば自動車で空港に向かっているとすれば、予定表に記入された航空会社と便名から、空港のどのビルのどの入口の近くに車を停めるのがいいのか記したカードが表示されれば便利に違いない。空港のビルの中に入れば、搭乗口の番号を書いたカードが表示され、搭乗口の方角を示してくれる。搭乗口に近づけば、今度は搭乗券のQRコードを含むカードが表示され、それを搭乗口の読み取り機にかざすだけで飛行機に乗り込むことができる。

こんな風に、ユーザーの今の状況に最適のカードを表示することが、スマートウォッチにとって最適のユーザーエクスペリエンス(UX、使い勝手)になる。

今、どこで、何をしようとしているのか、という情報は、GPSやビーコンといった現在地特定技術や、予定表などの情報を利用して判断することになるのだろう。


★チラ見で十分な情報量、簡潔な表現

パソコンは、1回の使用時間が2,3時間で、一日に2,3回使うデバイス。スマートフォンは1回に2、3分、一日に数十回使うデバイス。スマートフォンは恐らく1回に1,2秒、一日に1000回以上使うデバイスになるとみられている。

当然、パソコンやスマートフォンよりも、情報量が少なくなければならない。ちらっと見ただけで分かる内容でなければならない。

少ない情報量で的確にメッセージを伝える。その表現方法を工夫する必要がある。


★最低限の注意喚起、最適のレコメンド

無能な秘書は、何が重要事項か自分で判断できないので、なにかが起こるたびに、その都度報告してくる。上司の集中力が途切れることなどお構いなしだ。そんな秘書だとすぐにお払い箱になるだろう。

スマートウォッチ上で長く利用してもらえるサービスは、有能な秘書と同じであるべき。必要最低限のタイミングでのみカードを表示し、的確なレコメンドをしてくれる。そんなサービスが求められることだろう。

例えば、田中さんとの会合が3時からなのに、地下鉄の乗り換えで迷ってしまった。地下鉄を降りてから走っているのだが、このままだと到着予定時間は3時15分。慌てているのでに、テキストメッセージを送る余裕もない。そんなときスマートウォッチが「田中さんに『今、そちらに向かっています。申し訳ありません。15分ほど遅刻しそうです』というメッセージを送りましょうか?」というカードを表示してくれて、あとは「Yes」のマークをタップするだけ。そんなメールサービスがあれば、便利に違いない。


★画面デザインはシンプルに 最低限の操作で

スマートウォッチには、テキストを入力したり、画面上のボタンを何度もタップしなければならないようなデザインは向いていない。画面上に選択肢を数個以上置くと、押しづらいなる。

入力方法は、スワイプとタップ、1、2回が限度。あとはできるだけ音声入力で完結するようなサービスを考えるべきだろう。

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パソコン、スマートフォン、タブレットに加えて登場する第4のデバイス、スマートウォッチ。多くの人がこの4つのデバイスのうちの何台かを併せ持つ時代になる。それぞれのデバイスには、それぞれのデバイスに合ったサービスというものが存在する。

スマートウォッチに合ったサービスとはどんなものなのだろう。既存のソフトやサービスはどのようにスマートウォッチ上で変化すべきなのだろうか。また今までのデバイスでは使い勝手が悪かったために成立しなかったけれども、スマートウォッチ上では成立するサービスもあるに違いない。

スマートウォッチに最適なサービスを新しく開発した企業が、競合他社を大きく引き離すことになる。またしても一発逆転のチャンスがやってきた。


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