スマートウォッチをめぐる米シリコンバレーの動きが活発になってきた。Googleは、先日米カリフォルニア州で開催した開発者会議Google I/Oで、Googleのウエアラブルコンピューター向け新OS「Android Wear」を搭載したスマートウォッチを発表。一方で米国のテック系メディアの間では、Appleが開発中とうわさされているスマートウォッチ「iWatch(仮)」に関する報道が連日のように続いている。

そうした情報を総合すると、スマートウォッチは音声認識が目玉機能になりそうだ。またAppleが音声認識関連の技術者を多数雇用し始めたという情報もあり、AppleやAndroidなどトップランナー間の競争が激化することで、音声認識技術の性能が今後格段に向上するのは間違いない。腕につけているスマートウォッチに話かけることで、スマートフォンを始めとするあらゆるデジタル機器を操作する。そんな時代になるのかもしれない。


★癖になる使い勝手は新感覚

米ComputerWorld誌のコラムニストMike Elgan氏は、iPadが発売された当初、評論家の多くがiPadの成功を予測できなかったのは、実際の使い勝手ではなく技術的なスペックに注目したからだと指摘。スマートウォッチも使い勝手判断すべきだと主張している。そのElgan氏がGoogleのOSを搭載したスマートウォッチを実際に使ってみたところ、音声で手軽に検索できることが「新感覚」と呼べるほと快適な使い勝手であることが判明。同氏は、「スマートウォッチの音声認識は癖になるほどの使い勝手のよさで、iPad並みの社会現象になるだろう」と断言している。


ちょっと気になったことがあった時に、ポケットからスマホを取り出して検索キーワードを入力する必要もなく、ただ腕時計に向かってキーワードを発声するだけで検索して情報を入手できる。それがスムーズにできれば、確かに新感覚と呼べるような使い勝手になるかもしれない。

またCBS MoneyWatchのDave Johnson氏は、GoogleのOSを搭載したモトローラ製のスマートウォッチ「Moto X」が、一切手で触れなくても音声だけで操作できるところがすばらしいとして絶賛している。GoogleのOSを搭載したスマートフォンなどにも音声認識技術が搭載されているが、それを利用するにはスイッチを押すなどの動作が必要。スリープ状態では音声を認識できないようになっている。ところがMoto Xは音声認識機能は常にスタンバイ状態で、「Hey、Google」と呼びかけるだけで各種操作が可能だという。

可能な音声操作は、検索、電話をかける、ナビを操作、テキストメッセージ送信、スケジュール確認、リマインダー確認など。またMoto Xと無線接続されているスマートフォンやタブレットの操作も可能。

例えば、キッチンでクッキングをしているときに、タブレット端末でレシピを検索したいときに、濡れた手でタブレットを触らなくても、スマートウォッチに向かって「Hey, Google、タブレットでレシピを検索して」「次のページをめくって」と音声で命令することで、タブレットにレシピを表示させたりページをめくったりなどの操作が可能になる。

Googleにしろ、Appleにしろ、あらゆる家電機器をスマートフォンでコントロールする方向で準備を進めている。スマートウォッチの位置付けは、そうした家電ネットワークの音声リモコンになるのかもしれない。


★Appleは専門家を次々雇用

Appleはスマートウォッチに関しては一切正式な情報を公開していないので何を考えているのか正確には分からないが、ただ音声認識の専門家を次々と雇用し始めているようだ。

Wired誌によると、AppleはMicrosoftの音声認識技術研究部門のトップマネジャーAlex Acero氏を始め、リサーチャーのLi Deng氏、Dong Yu氏を雇用。また音声認識のトップ企業Nuance社からはGunnar Evermann氏、エジンバーグ大学からは音声認識技術の研究者Arnab Ghoshal氏を雇用している。実際にAppleからの誘いを受けたというトロント大学の研究者Abdel-rahman Mohamed氏によると、Appleはこうしたベテラン研究者だけではなく若い研究者にも声をかけており「音声認識の研究に関して非常に強力なチームを構築している」という。

特にAppleは脳のニューロンの機能を真似た設計思想を今後採用するものとみられており、これでAppleの音声認識機能sireが大幅に向上するものとみられている。

Appleの音声認識技術が向上すれば、Googleもさらなる向上を目指すだろうし、健全な技術開発競争が続き、音声技術は今後ますます便利になっていくのは間違いないだろう。


★ボイスメッセージングがキラーアプリに

過去に世界で局地的にヒットしたサービスにボイスメッセージングというものがある。テキストの代わりに録音した短い音声メッセージを送信し合うというものだ。一昔前は「プッシュ・ツー・トーク」という名称で呼ばれ、トランシーバーのように音声メッセージをやり取りするサービスが欧州の一部地域で流行したことがあった。日本でもガラケー時代にプッシュ・ツー・トークを導入したケータイキャリアがあったが、広く普及するまでには至らなかった。

最近では中国の人気メッセージングアプリ「WeChat」がいち早くボイスメッセージング機能を搭載。中国では、ものすごく流行しているようだ。日本のLINEもWeChatに続いてボイスメッセージジングを導入したが、スタンプほどの盛り上がりは見せていない。

恐らく文化的な要因が影響するためスマホのボイスメッセージジングが全世界で流行するというわけではなさそうだが、スマートウォッチ上の機能としてはボイスメッセージイングが大きなヒットになるのではないかと思う。

最大の理由は、スマートウォッチの小さな画面でテキストを入力するよりも、音声メッセージを録音したほうが手軽だからだ。

AppleのiPhone向けOSの次期改訂版には、iPhoneを持ち上げることで録音、再生が自動的に始まる機能が搭載される予定。口元にiPhoneを近づけるというモーションだけでメッセージを録音でき、耳元に近づけるだけで相手のメッセージを自動的に再生できるというものだ。この機能は当然、Appleのスマートウォッチにも搭載されることだろう。

スマートフォン上のボイスメッセージジングが流行した欧州や中国では、スマートウォッチ上のボイスメッセージジングは当然広く普及するだろうし、日本や米国のようにスマホのボイスメッセージイングが流行らなかった国でもスマートウォッチが普及することで、今度こそボイスメッセージングが流行る可能性がある。ボイスを核にした新しいボイスメッセージジングサービスが登場し、今日のLINEのように社会現象になるほど流行するかもしれない。

スマートフォンが巻き起こした社会変化を塗り替えるような変化をスマートウォッチは起こすのだろうか。それともスマートウォッチはスマートフォンの周辺機器としてのみ普及するのだろうか。

本格的スマートウォッチ時代はいよいよ今年後半から始まることになる。



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