【写真】TheWave湯川塾で講義する直感コンサルタントの坂本敬行氏

コンピューターに演算処理能力や記憶力で勝てるわけはなく、今後人工知能が進化すれば推測力でも勝てなくなる。そんな中で、唯一人間がコンピューターに勝ち続けることができる分野が「直感力」だ。直感力こそが21世紀に最も必要なスキルになる。21世紀型「直感力」のつけ方を、直感コンサルタントの坂本敬行氏に聞いた。

坂本氏によると、アイデアやひらめきには2種類あるという。1つは、思考の中から生まれるもの。もう1つは感覚から生まれるもの。坂本氏は前者を「直観」という漢字で表現し、後者を「直感」と表記して、2つを区別している。

仕事で何か新しいアイデアを出さないといけない。そういう状況の中で一生懸命アイデアを練ろうとする。恐らく競合他社も同じようにアイデアを練ろうとするだろう。同じ業界、同じ地域で働いているのなら、入ってくる情報もほとんど同じ。なのでたとえいいアイデアが出たとしても、競合他社も同じアイデアにたどり着く可能性が高い。「思考の中からアイデアを探そうとしているに過ぎない。直観の方なんです」と坂本氏は言う。

では思考を超えるのにはどうすればいいのだろうか。故スティーブ・ジョブズ氏は、思考を超えた何かにアクセスすることで「直感」を得ようとした。同氏が瞑想や禅に熱中していたのは有名な話だ。(参考記事 映画「スティーブ・ジョブズ1995」に見るジョブズの仏教的モノづくり観


▶直感を得るための3つのステップ


坂本氏によると、直感を得るには具体的には次の3つのステップが必要になってくると言う。

まずは、日常のパターンを壊す、ということ。自然の中で過ごすというのはその最たるものだが、このほかにも旅行に行ったり、通勤途中でいつもと違う道を歩く、などという方法もある。日常に埋没した思考から、自分自身を解き放つわけだ。

次に大事なのが、「スペースを作るということ」。スペースを作るということは、余裕を持たせるということだ。時間的な余裕、気持ちの余裕。さらに言えば、空間の余裕もそうだ。満員電車の中には空間の余裕がなく、余裕がない状態ではアイデアは湧いてこないという。スペースを持たせることでそのスペースにアイデアが入ってきやすくなり、入ってきたアイデアに気づく余裕も出てくるという。

最後は、「手放す」という行為。現代人の多くは、脳が作り出す常識や思い込みにとらわれているという。せっかくアイデアが「直感」で湧いてきても、常識にとらわれていて「そんなことできるわけはない」とそのアイデアをはねのけてしまうことが多いという。こうした常識や思い込みを手放す必要があると坂本氏は指摘する。


▶思考との一体化をやめる


特にこうした常識や思い込みが大きなハードルになる。坂本氏によると、現代人の多くは「脳」と「自分」を同一化しているという。脳には、危険を察知し身を守るという機能がある。「脳」はどうしても「守り」になってしまうのだという。

坂本氏によると、人間には脳と違うところに「意識」があるという。例えば新しい人や情報に触れたときに、脳の考えとは別に居心地の悪さを感じることがある。逆に、脳が出した結論とは反対に、心地よさを感じることもある。「思考」とは違う何かが判断を下しているわけだ。「鳥肌が立つ」「腹落ちする」という状況が存在するように、確かに脳とは別のところに意識があるように感じることがある。

「意識」が「脳」以外のところにあるという考え方は科学的には証明されていないのかもしれないが、最近米国西海岸で広まっているマインドフルネスという考え方に非常に似ている。

ウィキペディア(英語版)によると、マインドフルネスとは、感情や思考、感覚に「意識」を向け、今の瞬間をありのままを受け入れる状態のこと。瞑想による訓練でその状態に達することができるという。このマインドフルネスという考え方は、仏教の禅がベースになっているという。

米Googleは、マインドフルネスに基づくリーダーシップ向上プログラムを開発し、同社のエンジニアやマネジャー約1500人をこのプログラムを受講させているという。またGoogleのほかにも、Intel,SAPなど、大手IT企業の中にマインドフルネス訓練プログラムを企業研修として取り上げるところが増えているようだ。

Appleでジョブズ氏が禅や瞑想で成功を収めたことを受け、より多くの先端企業が、より科学的な手法で同様の直感法に取り組み始めたわけだ。

坂本氏も瞑想を勧めるが、瞑想以外にも自然の中での散歩の有効性も指摘している。特に都会に住む人に対して、大きな神社や公園の中を散歩することを勧めている。「自分という感覚ではなく、その場の自然と一体化した感覚を持つようにして歩いてみてください。心地よい状態で歩いていると、だんだん自分という境界線があいまいになってくる感覚がある。そういう感覚が育ってくると、自分自身を客観的に観察できるようになるんです」と言う。


▶感情とも一体化しない心地よい生き方


さてこの「脳だけに頼らない、意識が別のところにある」という感覚をつかむことができれば、直感力がつくだけではなく、生きるという行為自体が格段に楽になると坂本氏は指摘する。自分は脳であると考えているから、思考がぐるぐると周り始め、怒り、不安、恐れといった感情にとらわれる。そうした感情にとらわれると、感情はどんどん膨れ上がり、苦しくなる。「自分で自分の首を締め続けてるんです。自分でそう選択しているんです」と坂本氏は言う。

脳の思考や感情に人生を牛耳られるのではなく、自分の意識で自分の脳や肉体を観察する状態になることが大事だと坂本氏は指摘する。例えて言えば「『肉体の自分』がジェットコースターに乗って人生の上昇局面や下降局面を体験しているのを、もう一人の『意識の自分』が眺めている状態」。そんな状態になることで、まるで他人の人生を眺めているかのように自分を客観視でき、感情に振り回されることが少なくなるという。「ちょっと手放せば、人生は自然に流れていくんです。人生は『まあいいか』でちょうどいいんです」と坂本氏は言う。


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