【写真 Vuzix社の光学式スマートグラスのコンセプトモデル。普通のメガネと変わらない形状の製品が年内に完成する見通し】

Google Glassに代表されるスマートグラス(メガネ型ウエアラブル機器)。果たして広く普及するのだろうか。「あんなの四六時中つけてられないよ」「視野に障害物があるのって心地悪そう」「人はおしゃれじゃないものは身につけないよ」。スマートグラスに関しては否定的な意見が多い。しかし特定の用途向けには既に普及が始まっているし、普通のメガネ上にデータを表示する光学式スマートグラスも年内には開発される見通し。形状が普通のメガネとそう変わらないのなら、身に付ける人も多いのではないだろうか。


▶B向けには一部業界で既に普及していた

Googleが次世代デバイスとしてGoogle Glassを発表したことで急に脚光を浴びたスマートグラスだが、実はビジネス用途(B向け)では既に早くから普及している。例えば航空業界や石油業界では、機械の整備の際にスマートグラスが早くから利用されてきた。

例えば航空業界の場合、航空機に使用されている部品数は100万個から大型機になると600万個にもなる。どのネジをどこに使うか、など、細かなルールが無数に存在する。しかもネジとボルトの組み合わせを1つでも間違えば、航空機事故という大惨事につながりかねない。しかしパソコンを見ながら、ネジを回すのは面倒。そこで設計図をスマートグラスに映し出しながら作業をするのだという。

一方で石油業界の場合、石油採掘現場で機械が故障した場合、專門の修理工がその場にいればいいが、いない場合、專門の修理工が駆けつけるまで操業を停止しなければならない。数時間停止すれば億円単位の損失になる。なのでその場にいる修理工が、故障した部分の映像をスマートグラスでストリーミングしながら遠隔地の専門家のアドバイスを受けて修理する、ということをやっているようだ。

つまり①機械が複雑、②専門家がそう多くいない、③操業停止が莫大な損失になる、というような業界の工場や作業現場向けに、スマートグラスは非常に有効なデバイスだということだ。

システム大手のSAPと、スマートグラスメーカーのVuzix社が、そういう状況の際のスマートグラスの利用例をビデオにまとめている。大きなサッカーの試合が間もなく始まろうとしているスタジアムで、照明が切れた。最近の照明はコンピューターで制御されているので、修理には専門知識が必要。照明をすぐに修理できなければ、試合は中止。興行主にとっては、大変な損害になる。そこで現場近くにいた修理工が駆けつけ、スマートグラスからの指示に従って修理するという内容のビデオになっている。スマートグラスでどんなことができるのか、分かりやすい内容になっている。




▶倉庫、流通業でも普及の兆し

一方で軽量化、低価格化が進んできたことで、さらに多くの業界への普及が始まっている。特に今後普及が見込まれるのが倉庫、流通業での普及だ。

世界的システム大手SAPは、次のような動画を公開している。倉庫、流通業でスマートグラスがどのように利用されつつあるのか、やはりこれも動画を見ていただくのが一番分かりやすいと思う。

巨大倉庫の中には無数の商品郡。作業員はフォークリフトを操作しながら、目的の商品を集めていかないとならないのだが、倉庫の中のどの場所に進まないといけないのかスマートグラスがカーナビのように音声と矢印で案内してくれる。目的の棚に近づけば、AR(拡張現実)技術を使ってその商品の棚が緑に輝いて表示されるので、商品を間違うことがない。商品を手に持ってバーコードが印刷されている面を自分に向けるとスマートグラスが自動的にバーコードをスキャンし、正しい商品を選択したことが確認される、といった具合だ。



今後スマートグラスの軽量化、低価格化が進めば、さらに多くの業界で普及が始まるのは間違いない。医療や、教育、消防、警察などの分野でも、利用が期待されている。両手がふさがってデジタルデバイスを手で操作できないというすべての業務領域にスマートグラスは普及していくことだろう。

断言しておこう。スマートグラスは、両手がふさがる全ての業務領域に普及していくことになる。


▶C向けの課題は形状。それも年内に解決

いや、そんなことはない。あんな不格好なメガネはだれも装着したくない。そう考える人は多い。でも形状が普通のネガネのようになればどうだろう。スマートグラスの形状は今後、限りなく普通のメガネに近づく。実は普通のメガネ上にデータを表示できる光学式スマートグラスの開発が既に進んでいる。スマートグラスのトップメーカーの1つ米Vuzix社によると、同社は年内に光学式スマートグラスを納入する契約を米軍と結んだという。つまり年内には光学式スマートグラスが誕生する。問題はいつ一般向けに発売されるのかだが、少なくとも2、3年以内に一般向けにも発売になるのではないかと思う。形状もどんどん洗練されていくのだと思う。

そうなればスマートグラスは、B向けはもちろん、C向けにも普及を始めることだろう。

C向けではどんな用途に向いているのだろう。恐らくスマートグラスでできることのすべてがスマートフォンでもできるのだと思うが、何十分もスマートフォンを目の前にかざしていられないような状況ではスマートグラスのほうが便利なのでスマートグラスが利用されるようになるだろう。例えば、講師が外国人のセミナーなどでスピーチにリアルタイムで字幕がついたり、博物館でのナビゲーションなどという用途では、スマートグラスが利用されるようになると思う。



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