ほかの地図アプリがGoogleマップに、逆立ちしても勝てない機能がある。ストリートビューだ。行ったことがない場所の雰囲気など、写真から得られる情報の質と量は、テキスト情報のそれをはるかに上回る。そして写真がより最近のものだったり、リアルタイムの動画だったりすれば、情報はさらに価値のあるものになるはず。

その価値ある情報を空から取りにいこうという動きが活発化している。人工衛星ビジネスだ。

人工衛星の打ち上げ技術や小型化、映像処理に関するソフトウェア技術などの向上を受けて、関連ベンチャーに対する投資が活発になってきた。


▶人工衛星の大きさはワインボトルほど


Googleは今年6月に、人工衛星ベンチャーのSkybox Imaging社を5億ドルで買収している。米国からの報道によると、Skybox社の人工衛星は小型で低価格にもかかわらず、米軍の人工衛星並みの航空写真を撮影できるのだという。どうやらハードウエアだけではなく、イメージプロセシングなどのソフトウエア技術で、同等の写真を撮影できるようだ。Skyboxはこれまで人工衛星を1基打ち上げただけだったが、Googleの資金力を得たことで、一気に本格的なビジネスを展開するものとみられる。

このほか米Wall Street Journal紙によると、人工衛星ベンチャーのSpire社(旧NanoSatisfi社)は、2500万ドルの資金調達に成功。同じくRocket Lab社も金額は公開していないものの、昨年資金調達に成功しており、2015年には新型ロケットElectronを打ち上げると発表している。

Spire社、Rocket社ともに、低コストで人工衛星を打ち上げることができるのが特徴。

Spire社は既に4基の「ワインボトルぐらいの大きさの」超小型人工衛星の打ち上げに成功しており、今後さらに50基を打ち上げる計画。三井物産系のベンチャーキャピタルも同社に投資したようだ。

Roket Lab社によると、新型ロケットの価格は約490万ドル。従来の価格の20分の1だという。来年には手始めに30基の打ち上げの準備をしており、最終的には年間120基以上は打ち上げ続け、300基から3000基で全地球をカバーしたいと言う。

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▶次期iPhoneの発売時期も予測できる?

低コスト人工衛星が全地球をカバーするようになれば、どんなことができるのだろうか。

もちろん天気予報ビジネスは大きく変わるだろう。ゲリラ豪雨など局地的な天候の変化も細かくリアルタイムに把握できるようになるだろう。

食糧生産地の状態を1平方メートルレベルの細かな単位で調べることで、穀物のおおよその相場を何カ月も前に推定できるようになるかもしれない。

上空から石油貯蔵タンクの映像を撮ることで、サウジアラビアが地下から生産する石油の量を判断できるようになるだろう。

海上を行き来するタンカーの数を測定することで石油の輸出入量を推測できたり、各国の経済の動きをリアルタイムで把握できるかもしれない。

飛行場の離着陸をモニターすることで、航空機の便に遅れがないかを確認できるようにもなるだろう。

道路を上空からモニターして、交通渋滞の現状も分かるし、事故が発生すればその状況も分かる。

ショッピングモールの駐車場の混雑状況を見れば、ショッピングモールが決算を発表する前に、売上高を予測できるようになるだろう。

Apple製品の製造を受け持つ台湾の工場を上空から監視し、行き来するトラックの数を見ることで、新型iPhoneの発売時期がつかめるようになるかもしれない。

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▶民間の宇宙事業はブルーオーシャン


上空からすべてをモニターするということは、プライバシーの侵害にならないのだろうか。今日でも小型飛行機で上空写真を撮影できるので、法的問題はないかもしれない。ただ常時モニターするとなると、倫理的な問題が浮上してくるかもしれない。Skybox社によると、現状の技術では人の顔は認識できないし、車のナンバープレートも分からないとしている。しかし今後技術が進歩すれば、より鮮明な画像、映像が取れるようになるのは間違いないだろう。

とはいえストリートビューが始まったときもプライバシー問題が取りざたされたが、人の顔や車のナンバープレートをぼかすことで対処した経緯がある。同様に技術的な解決は可能だろう。

現状の人工衛星の幾つかは老朽化が進み、カバーできているのは地球の4分の1程度。Spire社のCEOは「民間の宇宙事業は今のところ、存在しないも同じ」と、この領域がブルー・オーシャンであることを強調している。Rocket Lab社のCEOも「数百万ドルでロケットを打ち上げることができるのであれば、非常におもしろいことができるし、すごいチャンスだ」と語っている。


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