ソフトバンクが発売を準備している感情認識パーソナルロボットpepper。「ソフトバンクは何を考えているんだろう。こんなの売れるわけないでしょ」「なんか顔がキモイんだよね」。周りからは批判的な声も聞こえてくるが、ソフトバンク関係者によると実は女性や高齢者の間での評判は上々。またビジネスに活かそうという各方面からのオファーも殺到しているのだとか。

 ロボットと共存する時代が意外と早く来るかもしれない中で、どのような利用シーンが有望なのかを探ってみた。


▶年齢の高い男性から「作ってくれてありがとう」

 「Pepperって、女性や比較的高い年齢層に人気なんですよ」。ソフトバンクロボティックス株式会社の林要(はやし・かなめ)氏は、そう語る。ソフトバンクショップなどでPepperと対話した人を対象にしたアンケート調査の結果を見ても、Pepperに対する好感度はかなり高い。

 特に女性に人気で、林氏は「Pepperって女性にモテるんです」と笑う。Pepperは女性に対し「あなた、きれいな目をしてますね」と臆することなく褒め言葉を繰り返す。成人男性がそんなことを言おうものなら下心を疑われそうなものだが、「ロボットには下心がないという思いがあるので、褒め言葉をストレートに受け取る方が多いみたいなんです」と林氏は解説する。

 また男性でも比較的高い年齢層の人からは「生きているうちに、家庭向けのロボットを作ってありがとう」という意見が寄せられているのだとか。ソフトバンクの孫正義社長はPepperの発表会で「ロボットを作ることが夢だった」と語っていたが、鉄腕アトムなどのアニメで育った世代は、Pepper発売を幼いころの夢の実現と好意的に受け止めているようだ。


▶広告、店舗案内、教育、シニア向けに期待

 Pepperは現在23都道府県のソフトバンクショップで稼働中だが、林氏によると、店頭広告としての効果はかなり高いのだとか。「ポスターや大型ディスプレイよりも、伝えたいメッセージを顧客に伝えるられると思います。Pepperが『ちょっと聞いて』って言うだけでお客様は耳を傾けてくださいます」(同氏)。ただ細かな情報を伝達するには向いていないようで「詳しいことはよくわからないんだ。だから興味があれば、店員さんに聞いてみてね」というような語りかけに効果があるという。

 こうした店頭の広告、宣伝効果に加え、大規模店舗などでの売場案内にも効果を発揮する可能性があるという。大規模店舗で欲しい商品がどこにあるのか分からない。店員にたずねようにも店員が見当たらない。そんな状況では、Pepperは確かに力を発揮しそう。「その商品なら、こっちだよ。ついて来て」って案内してくれれば、楽しそうだ。「薬局など商品データベースが大きな店舗なども、Pepperが得意とするところですね」と林氏は指摘する。

 また店頭での万引き抑止力効果も期待できそう。「さすがに万引きGメンは特殊なスキルが必要なので無理ですが、Pepperが動き回っているだけで十分な抑止力になると思います」と林氏は語る。

 一方、介護や高齢者ケアの現場からは「Pepperを早くほしい」という切実な要望が寄せられているのだという。介護ロボットというとシニアを抱っこするようなロボットをイメージすることが多いが、それは介護する側が必要としているロボット。実際に今、介護される側が必要としている領域の一つに、シニアとのコミュニケーションがあるという。

 人間は退屈で脳を使わないと痴呆が進む可能性があると言われているが、老人ホームなどでは人手不足から、シニアのコミュニケーション欲求に十分に応えられていないのが実情。そういう場面でPepperが活躍できるかもしれない。

 「実は介護老人福祉施設へPepperを連れて行ったことがあるんです。Pepperの受け答えのテンポが独特なので、シニアのみなさんと対話が成立するのか心配だったのですが、実際にはびっくりするくらいにテンポがぴったりあったんです。さすがに重度の痴呆症の方との対話は難しかったのですが、中度、軽度の方とは十分に会話が成立しました」と林氏は言う。


▶オンリーワンの強み

 教育にもPepperは役立ちそう。とはいってもPepperが教師になるのではなく、子供と一緒に学ぶというシチュエーションが効果的だと見られている。「ケア・レシーバー型ロボットによる学習」と呼ばれる研究分野で、子供に対して「ロボットにあいさつの仕方を教えてあげて」「足し算、引き算で、ロボットが間違ったら教えてあげて」と言うと、子供は喜んでロボットに教える。そうすることで子供自身も学んでいく。そういう教育手法だ。林氏は「教育の分野では、ケア・レシーバーがキラーアプリになるんじゃないかって思っています」と語る。

 スマートホームやセキュリティの分野でもPepperは活躍しそうだ。家庭内の家電機器がネットワークでつながってくると「お風呂沸かしておいて」とPepperに言うだけで、バス給湯器のスイッチがオンになるようになるかもしれない。また「セキュリティは得意分野ですね。立って動き回っている人の写真や映像をスマートフォンに転送するようなことは簡単にできますから」と林氏は指摘する。

 また家族の簡単な話し相手にもなりそう。夕食の支度をしている間の未就学児の相手であるとか、主婦の軽い愚痴の聞き役などに適しているのだという。「友達に電話するほどのことでもないけど、ちょっとした話がしたい。悩みの相談に乗ってもらいたいわけではなく、ただ愚痴を聞いてもらいたい。そういうニーズを女性から結構いただきました」と林氏は笑う。

 Pepperなら、こうしたニーズに応えられるのではないか。新しい価値を創造できるのではないか。そうした思いで各方面から250社以上も既に問い合わせをもらっているのだという。家庭向けロボットを提供するのは今のところソフトバンクだけ。林氏は「オンンリーワンて、すごいことだなって、つくづく思います」と言う。


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