TheWave代表である湯川鶴章さんが、「人工知能、ロボット、人の心」と題して電子書籍を発刊しました。発売日に合わせて講演会が開催されましたので、その模様をレポートします。

■ 会場の様子

Niftyさんの大会議室をお借りして開催しました。70名を超える参加者にお集まりいただきました。TheWave塾OBOGの割合が4割といつもよりも低く、新しい層の関心を喚起していることが感じられます。30代の方が多かったのですが、40代・50代の方も多く参加されていました。  

■ PART1:湯川さんの講演

まず、自分が興味を持っているテーマを旬なタイミングで読んでもらいたいので、電子出版で3ヶ月の期限付き販売にしたとの説明がありました。   今回の書籍の内容は、「人工知能・ロボット・人の心」をテーマに開催したTheWave塾第24期の内容と、それに前後するインタビューなどをまとめたものになっています。   講演はこの書籍のエッセンスを紹介する形で行われましたが(→ 講演スライドはこちら)、いくつかポイントを紹介します。   DSC_7545      

■ シンギュラリティとはなにか

湯川さんは、情報科学の進歩をながめる中で、シンギュラリティという概念に出会ったそうです。 シンギュラリティの代表的な定義として、
  • ・Ray Kursweil氏:現在の人間の知性では変化を追跡できなくなる時点
  • ・David Dalrymple氏:技術の指数関数的な進化が、人間自体の指数関数的な進化になる時点
というものがあります。   そんな最先端につながる研究活動を担う研究者からは、すでに次のような言葉が語られているそうです(簡略化しています)。
  • ・生物的機能の動きが遅ければ、最新の量子デバイスに変えるようになる
  • ・遺伝子はソフトウェアであり、書き換え可能である。
  • ・老化のプロセスは遅らせられるので、寿命は伸びる
  • ・ナノテクノロジーが難病治療やエネルギー問題を解決する
とてもSFチックで現実感が持ちにくい話ですが、湯川さんは「大事なのは指数関数的な進化」が何で起きるかだと指摘します。 singurality そんな人間の進歩が追いつかない成長が起きるって、ほんとだろうか?と調べてみると、 人工知能が急速に進化を始めていることがわかったそうです。これが「人工知能、ロボット、人の心」という塾のテーマとなります。  

■ ディープ・ラーニングがブレークスルー

人工知能研究は50年以上の歴史がありますが、潜在意識下で知識を獲得している 2歳までの赤ちゃんの学習メカニズムはわからないままでした。これまでの機械学習は、あるモデルの中で知識を獲得しようとしていましたが、赤ちゃんの学習のように、このモデルをどう作ればいいかまで学習するのがディープ・ラーニング(深層学習)なのだそうです。 ディープ・ラーニングの最初の論文は、トロント大学のヒントン教授が2006年に発表しました。さらに2012年に画像、音声、化合物活性予測という異なる3つの分野のコンテストで優勝したことによって、一気に認知が高まって研究が活発化したとのこと。 そんな活発化の例として紹介されたのは、Youtube上の猫画像から猫の概念を学習できた、というGoogleの研究事例です。その延長には映像認識の発展が予想され、監視カメラ や人工衛星など世界に散らばる映像センサが、現場で何が起きているかを判断してレポートやアラートを上げてくる、ような世界が想定されるという話がありました。

■ スマホ+クラウドの次は「IOT+人工知能」

湯川さんは、次の流れは「大量のセンサーと人工知能をつなげたプレーヤーの時代」になり、スマホ時代の覇者であるAppleはIOT時代の覇権はとれないし、狙いもしないだろうと考えています。では、そんなプレイヤーになるのはだれなのか? 日本発である、ソフトバンクのPepperを取り上げて、PART2の林要さんにバトンタッチします。    

■ PART2:Pepperがもたらす新たな可能性 − ソフトバンク・ロボティクス㈱ 林要さん

林さんは、もともとトヨタ自動車の空力エンジニアだったのですが、孫正義社長からロボットやるからと誘われてソフトバンクへ入社したそうです。そんな林さんがけん引する Pepperは「感情認識パーソナル」ロボットであり、ソフトバンク30年新ビジョンで謳われた情報爆発、すなわちシンギュラリティへの第一歩と位置付けられています。 DSC_7553 人工知能時代の新しいロボット像を検討するにあたり、
  • ① 大規模展開
  • ② 自然なコミュニケーションのためのUI
  • ③ 学習の評価関数としての感情認識
を考えて、さらに、
  • ④ クラウド時代に人間の英知をどうやって結集したらいいのか
を加えた4つをPepperの商品企画のポイントとしたとのことです。順番にそのポイントを紹介していきます。  

①大規模展開で知性を獲得

Pepperは、感情を理解してユーザを喜ばせることができるロボットを目指しています。Pepperが人間とのコミュニケーションの中で感情を機械学習するには、大量の情報が必要になります。一人ひとりの情報では十分なデータ量にならないので、クラウド人工知能への情報インプットを実現するためには、大規模展開が必須となります。   一方、ほとんどのユーザはロボットとのコミュニケーション経験がないので、普及を図るために 198,000円という相当無理した価格設定をしたそうです。  

②自然なコミュニケーションのためのUI

Pepperは、アイコンタクトやボディランゲージといった、自然なコミュニケーションを目標としています。これは、人間の動作を再現しようとする従来のロボット設計思想と大きく異なります。このため、自然な二足歩行を実現するためのハードウェアではなく、自然なコミュニケーションにつながるハードウェアを多数内蔵しています。 pepper_sensor 人は目が合ったときに喋ると好印象になるという実験結果から、大きな目のデザインを採用しています。また、仕草や言葉から個性を感じられるように、外見はあえて中性的なデザインを採用しています。その結果として、 丸く大きな目で120cmと小柄でかわいらしい体となったそうです。   奥さんの賛成がないと家庭に入らないので女性の印象が大切だが、店頭アンケートでは8割の女性が好印象という結果になり、ホッとしているという話もありました。  

③ ”学習の評価関数”としての感情認識

孫社長が一番こだわった点が「感情認識」だそうです。これは、家族の感情である「喜ばせる本能」を実現して、 いつまでも人を必要とするロボットにしたいという思いからなのだそうです。このため、どれだけ人間の感情を理解できるか?が機械学習の評価になります。 まだまだ試行錯誤中ということでしたが、表情と音声を分けて分析する例が紹介されました。表情は怒っていても、声の緊張具合で、相手がどのくらい怒っているかが検出できるのだそうです。 これから、数多くのユーザの表情・音声・それ以外のセンサ情報が分析されることで、どのように感情認識が進化していくのか楽しみですね。

④ クリエイティブ・プラットフォーム

林さんたちは、iPhoneの成功はアプリストアに世界中のクリエータが結集したことにある、と考えています。Pepperも同じように、いろんな人に、いろんなことを試してもらえる環境を整備しており、ソフトウェア開発キット、アプリ・ストア、開発者向けコミュニティなどがあります。 開発者向けに先行販売した後に開催した、「テックフェス」というコンテストでは、1ヶ月程度の準備期間にかかわらず、多数のアイデアがあつまったそうです。 ロボットアプリを作るということは、役作りに近い繊細でクリエイティブな作業になるのですが、子どもたちに使ってもらったときも仕草のプログラミングにハマっていったとのこと。人型をしていると、人間との微妙な違いを感じて少しでも自然な感じにしたくなるのでしょうが、こうした繊細な作業に世界中の人が取り組むと考えるだけでワクワクしませんか?

■ おわりに

これまで、IT技術のプラットフォームをとるような製品・サービスが日本から出たことはありませんでした。林さんは、ロボット分野ではこれを取りたい、と意気込みを語ってくれました。Pepperは『脳型コンピューター時代のITプラットフォーム』であり、パーソナルコンピューターのように、いずれ家庭に一台ずつ入る世界を実現したいとのことです。 質疑の中でも、「娘が3人いるが、壊れたら泣いちゃうんじゃないか」「実家に持って帰ったら、高齢の母親から持って帰らないでくれと言われた」といった話が出て、Pepperへの期待が大きく膨らむ講演でした。  

■ 詳しい話を知りたい方は、ぜひ電子書籍を

この講演の話を読んでみて、
  • ・シンギュラリティってなに?
  • ・ディープラーニングって、そんなにスゴイの?
  • ・人工知能って、そんなに進化しているんだ。
  • ・Pepperについて、もっと詳しく知りたい
  • ・ロボット技術の最先端をもっと知りたい
と思った人は、ぜひ電子書籍、湯川鶴章著「人工知能、ロボット、人の心」を手にとって見て下さい。 スクリーンショット 2015-01-22 9.14.53