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先日開催された第10回「ジオメディアサミット」の模様を、TechWaveのジオ担当の鈴木まなみさんに書いてもらいました。(本田)

鈴木まなみ
(@rin2tree)


 11月29日(木)、第10回「ジオメディアサミット」が開催された。ジオメディアサミットとは、2008年に有志が始めた、位置情報業界を盛り上げるためのフリーカンファレンスである。今回のテーマは「地域メディアの可能性」。



 ジオメディアサミットを主催している関治之氏は、今回のテーマ選定に関してこう語った。
「過去のジオメディアサミットにおいては、位置情報をツールとしてどのように利用するのか?といった話や、最近のトレンド(例:O2Oやソーシャルメディア)などを題材として上げてきた。現在、『位置情報ビジネス調査報告書2013』を執筆するにあたり、「テクノロジーだけをフォーカスしたようなサービスって上手くいってない、位置情報というのは手段に過ぎない。」という話を書いた。地域メディアに関しても、位置情報というのは手段に過ぎず、どのように使って、どのように地域に根付かせるのか?という視点が重要で、それは「人」というのが大切と考え、それを実践している「人」たちにお話をしてもらいたいと考えた。」




 また、今回は、10月にTechWaveからのスピンアウトとしてリリースされ、”離れた地域に住む人のエネルギーを交換する「プロジェクト&メディア」サイト”を標榜する「finder」とのコラボイベントとなり、finder主宰の本田正浩氏がパネルディスカッションのモデレーターを務めた。



 同氏によると、finderの役割は「テクノロジーは、地域や地方でこそ、力が発揮出来るものだと思っている。地方の人がマスメディアから取得出来るのは、①地元の情報②東京の情報③世界の情報であり、他の地方の情報はなかなか得ることが出来ない。しかし、地方の問題の解決事例は他の地方にあり、そこにこそ、オンラインメディアの価値があると思っている。いろんな地域を取材し、紹介することで、地域と地域、人と人を結びつけたり、一緒に何か出来ればと思っている。」とのこと。

メイン講演


「相乗効果で良くなろう!データシティ鯖江とジオメディア」



登壇者:福野泰介氏(株式会社jig.jp代表)

 福井県鯖江市は、市の情報を積極的に公開する”データシティ鯖江”を目指している。それまでにいたる経緯は、



 ・市長に直接データシティ鯖江市を提案

   ↓ 出来ることから始めようと承認される

 ・鯖江市のデータを利用して、作りやすいアプリから作成し、LODチャレンジに応募

   ↓ 「公共LOD賞」を授賞

   ↓ 行政データの利活用が一番進んでいるのは「鯖江市」とまで言われる

 ・オープンガバメントデイを鯖江市で実施

   ↓ 様々な方を招いてオープンガバメントに関してディスカッション

 ・オープンデータ流通推進コンソーシアムの利活用委員会にも鯖江市と福野が就任

   ↓

 ・「オープンガバメントサミット@鯖江」の実施:7割が県外からの来場



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福野さんの発言をまとめると、

 こんな風にいろいろと物事がうまく進んでいったのは、まずはデータを出せ!ではなく、信頼関係を構築してから、どんなところからやっていきましょうかと一緒に進めてきたから。オープンガバメント(行政によるオープンデータ)は今後のWEB産業の基盤になると思っている。情報としてのインフラが整備されていることが、今後のWEB産業において非常に重要なファクターとなるだろう。



 データシティ鯖江は単にデータを公開しているに過ぎない。しかし、サービスまで作ることで初めて、多くの人に使われ意味が生まれる。今までは行政がサービスまで作ろうとしていて、お金がかかり、生み出していくのが大変だった。しかし、データとサービスを切り分けることで、いろいろなニーズに対応出来る仕組みに生まれ変わる。



 行政のデータを使って民間がサービスを作り、使われるサービスが次々と作られていき、そんなエコシステムがまわって、はじめてジオメディアが成り立つのではないか? データシティの裏側にはローカルでディープな人と人のつながりが有る。ジオメディアで人と人とをつなごう。




事例紹介



 事例紹介は以下の5名から行われた。

①テクノロジーとクリエイティブのフェスティバル 明星和楽



登壇者:橋本正徳氏(株式会社ヌーラボ代表)

 明星和楽とは、SXSWをモデルにした「アジアのテクノロジーとクリエイティブに関わる人々が福岡に集まる」フェスティバルである。楽しいことをやりたかっただけだが、海外で記事にしてもらうことなどによって、国内では「とんでもないことが起きるんじゃないか」という不思議な期待を演出し、行政をも巻き込む結果に繋げた。



 開発効率や環境構築の簡易化により、今後のプロダクトは表現力や使い勝手が重要になり、今は説明が出来ない「第6感」のようなものが必要となると考えている。そのため、テクノロジーだけではなく、クリエイティブな雰囲気を大切にし、アンテナの高い人に来てもらうことを意識した。会場作りも、ネイルをしている隣でJavaScriptの会話がされているようなカオスな空間を作り出し、別の目的を持ってきたのに、他の興味のあることが耳に入ってくるというセレンディピティ的空間を目指した。



 今後は、「福岡の明星和楽」から「アジアの明星和楽」となり、もっとテクノロジー以外のクリエイティブ要素を増やしていきたい。


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②「ジオキャッシングの聖地 式根島CITOで地域活性化」



登壇者:下井勝博氏(新島村商工会)

 ジオキャッシングとは、GPSを利用し、地球規模で行われている宝探しゲームである。伊豆諸島の式根島では、CITO(Cache in Trash out)と呼ばれる、宝探しにゴミ拾いも兼ねたスタイルをとっている。位置情報が登録されたキャッシュと呼ばれる宝箱の中にはノートが入っており、発見者はそこに旅の思い出などを書き込むことが出来る。



 子供と一緒に行うことで、子供たちに島の環境問題を考える機会を与えたり、島外の方との交流を創出したりしている。子供に参加してもらうことで、住民がイベントを認知してくれ、かつ印象もとてもよく、ワイワイと実施出来ている。



 また、観光ビュースポットに宝を置くことで、観光地巡りにも利用している。こういったコミュニティを形成することにより、地域活性化へつなげている。


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③「NFCで下町」



登壇者:杉本礼彦氏(株式会社ブリリアントサービス代表)

 11月17日に横浜市の六角橋商店街で行われたNFCを使ったイベントについての説明から。大半は笑いに包まれたプレゼンの中、最後にNFCの特徴として以下の3点を真面目に語った。



・そこに行かなければ得られない価値体験

・子供からお年寄りまで簡単に出来る

・リアルに入り込みやすい(下町でもOK)



 イベントの様子に関しては、こちらをご覧下さい。

 →タッチの楽しさ!レトロな商店街が教えた、NFC普及の鍵は遊び心にあり|finder


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④「ソーシャルデザインで地域を変える」



登壇者:鈴木菜央氏(greenz.jp発行人/NPO法人グリーンズ代表理事)

 ソーシャルデザインとは、「社会的な課題の解決と同時に、新たな価値を創出する画期的な仕組みを作ること」を指す。greenz.jpで掲載されている世界中の事例から、特に地域の課題解決に繋がりそうなものをいくつか紹介した。



 ・制限速度を守れば宝くじがあたる「スピード・カメラ・ロッタリー」

 ・好きなおばあちゃんにマフラーを編んでもらえる「Golden Hook」

 ・大阪のホームレスの課題と都市交通の問題を一挙に解決する「ハブチャリ」



 鈴木氏は「みんなが人生の主役になれる社会作りを目指し、ソーシャルデザインの場づくりを提供している。具体的には、ソーシャルデザインに関わる人、関わりたい人同士をつなげるgreen drinksや、ソーシャルデザインを実際にカタチにする場を提供するgreen Schoolなどである。」と語った。


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⑤「地域情報空間の構築」



上仲輝幸氏(紀伊民報マルチメディア事業部係長)

 和歌山県南部の田辺市を中心エリアとする地方紙・紀伊民報が運営している、ホームページ更新システム「eメイド」、地域生活情報「KiiLife」、地域SNS「みかん」などについて。



 地域SNSは最強のDBと語り、同社が提供する上記サービスと連携することで、地域の事業者のネットでの情報発信をより簡単なものにさせている。また、フリーペーパーも展開しており、手段に囚われず、様々なユーザーとの接点を作っている。



 上仲氏は「地域情報のほとんどはデジタル化、DB化されていない。地域の人と人、人と情報は予想以上につながっていないため、地域メディアのスタートラインは、地域の様々な人と人、モノとモノ、人とモノが様々な形でつながる情報空間の構築である」と語った。


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蛇足:めんどくさいこと言うよ


 パネルディスカッションの「地域メディアを続けていくためコツは?」という質問に対し、



  福野氏:楽しむことと楽しめる人と一緒にやること

  橋本氏:事業化すること

  下井氏:お金をかけないで継続することと、子供たちを巻き込むこと

  杉本氏:子供、そしてエロ

  鈴木氏:こうなったらいいなという想いを重ねられるように作る

  上仲氏:いろんな人に出会うこと

 という答えが出た。



 どんなことにおいても重要なことは、「人」なのだと思う。人のエネルギー(楽しい、エロ、想い)がスタートにあれば、土台はしっかりしている。多くのパネラーの方はその「必要条件」を理解しており、その上で日々の日常生活(お金、子供)に深く関わる要素は、継続における「十分条件」なのではないだろうか。色々な地域で実際に活躍している方の言葉だからこそ、重みをさらに感じた。



 実は今回一番心に刺さった言葉は、「地元へのインパクトはありましたか?」という問に会する橋本氏の「たかが4000人が集まったところで地域が変わるわけではない。ただ、参加者や運営者どうしのつながりの強化、運営者達のブランディング、市長によるスタートアップ支援宣言などにつながった」という言葉だった。


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 私の知り合いで、明星和楽に関わっているスタッフの一人がいるが、私は彼に初めて会ったとき、明星和楽に関わっているというだけで見方が変わった。(もちろんプラスに)。その後、彼と仲良くなり、彼のことを見ているが、明星和楽のスタッフということが、いろんな人との出会いを創出し、彼自身の人生を大きく変えているように思う。そして、彼自身も生き生きとしている。



 直接的な効果としては「4000人を集めたただのイベント」なのかもしれない。しかし、私は地域にもたらした効果はとても大きいと思う。地域にいる人が生き生きとすることは、明星和楽以外での効果も地域にもたらす。そして、どんな理由でも一度その土地に来てもらいプラスの体験をもたらすことは、その土地へのロイヤリティを創出し、波及効果がある。現に、明星和楽にいって、福岡が好きになったという人が私の周りにはたくさんいる。



 以前ゲーミフィケーションの記事の蛇足にも書いたが、プラスの体験はロイヤリティを創出する。今回事例としてあげられたものは、切り口は違えど、興味の持っていない人に興味をもってもらう切り口を準備し、本質的な人間の欲求を満たし、プラスの体験を創出しているように思う。そして、仕掛けている人達はみな「人の感情」の大切さを気づいている。




 最近のサービスに感じていたことは、「ユーザにどんな価値を提供したいと思っているのか?」が分からなく、ただ単に新しいテクノロジーを使ってサービスを作ってみたかったんじゃないか?というものが本当に多いなってことである。位置情報サービスは2010年あたりから様々なサービスがリリースされた。…がクローズとなったサービス(Gowalla、Ditto、forcast 、Neer、will go later、Glanceeなど)も多かった。




 最近執筆した「位置情報ビジネス調査報告書2013」にも書いたが、位置情報は手段なので、それを主役にしたサービスは継続が難しい。サミット後の関さんのつぶやきにもあるように「テクノロジーは手段にしか過ぎない。あくまで解決したい課題が最初に来て、その為にテクノロジーを使うようにしなくてはいけない。」ということを、とても感じたジオメディアサミットだった。




 ジオメディアサミットやfinderは、課題を共有し、その解決方法としてのテクノロジーを使い方を提案出来るような専門家とのつながりや、課題をテクノロジーで解決した事例を共有し、同じ課題をもった仲間とのつながりをつくる場やコミュニティなのだと改めて認識した。



<参考>

■第10回 ジオメディアサミット「地域メディアの可能性」

http://peatix.com/event/8340

■togetter

http://togetter.com/li/414870





著者プロフィール:著者プロフィール:鈴木まなみ



2000年からITの世界に入り、 地図、乗換と生活に密着した便利系サイトのプロデューサーと、経営企画や新規事業企画などを担当。 今の興味はSOLOMOCO(Social Local Mobile Commerce)、テイストグラフ、ビッグデータ。



位置情報サービスの企画、コンサルします。連絡先はrin2tree[アットマーク]gmail.comまで。