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先日開催された第9回「ジオメディアサミット」の模様を、TechWaveのジオ担当の鈴木まなみさんに書いてもらいました。(本田)

鈴木まなみ
(@rin2tree)


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 6月23日に第9回「ジオメディアサミット」が開催された。ジオメディアサミットとは、2008年に有志が始めた、位置情報業界を盛り上げるためのフリーカンファレンスである。今回のテーマは「これからの「技術」の話をしよう」。講演のメイン、tabとPinQAについて取り上げる。


インタレストをアクションに変換するセカイカメラの進化系“tab”




 最初の講演は、頓智ドット株式会社の井口尊仁氏。6月27日にリリースされた新サービス“tab”は、「情報の共有や発見だけではなく、現実の行動に移したい!そんなサービスである」。
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 比較サービスとして井口氏は、Facebook、Pinterest、Foursquareを挙げ、いずれも現実に行動出来る媒体ではなく、大きな機会損出になっていると強調した。



  • Facebook:「いいね」をつけても、たいていは忘れてしまう

  • Pinterest:シェアしても実際には行かない

  • Foursquare:よく行く場所にもっと行く行動は誘発するが、新しい行動の喚起はしない



 興味関心を実行出来ないのは認知出来ていないからであり、行動に移せている時は、興味関心を覚えていて、しかもそれを思い出せている時である。“tab”は記憶して認知することをサポートすることで、インタレストを行動につなぐとし、そのメカニズムの3ステップに関して説明した。



 ●Browse:インタレストを発見する(興味喚起サポート)

   ↓

 ●Tab:Tabすることでインタレストを覚える(記憶サポート)

   ↓

 ●Act:行動範囲圏内にある以前覚えたインタレストをポップアップで気づかせ行動を促す(認知サポート)



 「Nearby機能によって行動可能なインタレストが簡単に、効果的に分かる(思い出せる)ので、覚えたことを行動にまで移せる。認知に関しては、“tab”を使えば、自分の周辺エリアの情報が充実しているというメディア体験によって、何かしたいときに習慣的に開くメディアになり、効果的な記憶と認知のきっかけにならないかと思っている。」と語った。




位置情報のまとめサイトに進化した『PinQA』





 「PinQAは名前の通り、QAサイトでしたが、今年からまとめサイトに進化しました。」とNTTレゾナントの澤村正樹氏。



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 もともとの『PinQA』の問題意識としては、「ネットで調べる情報はまだまだ足りておらず、人が持っている情報はまだ多い。単品の位置情報として登録されていない情報でも、その土地に詳しい人だけが知っている情報はたくさんある。つまり限定された情報を人は持っている。だからこそ、そういった人の持つローカル情報をネットに流通させることで、問題解決が生まれるのではないか?」といういうものだった。



 しかし、QAサイトを運営をして気付いた問題点は、


  • ローカル情報の局地性

    位置サービスは局所的になりがちで「このエリアなら知ってる」といった待ち状態と情報が欲しい側のミスマッチが発生。情報を出したくても機会がないという状態になっていた。

  • 書き込みたいコンテンツニーズとのアンマッチ

    ネットに書き込みたいコンテンツは、問題を解決するような情報ではなく、ちょっとした自己アピールの情報(例:食べ物など)ばかりが流通する。

  • 位置情報とテキストだけのサービスは褒められるが愛されない(笑)



 一方、QAサイト運営によって得られた良い気付きは、

  • 当初の考えの「人にはネットに上がっていない情報をもっている」というのは確かである

  • それは、タイミングとニーズがあれば語りたいという欲求も持っている

  • そして、それは単品ではなく一連のストーリーや自分だけのコンテキストで語りたい



 これらの気づきを経て、リニューアルの際に重視したポイントは以下2点であるという。

  1. 点から線へ(位置をつなぐストーリーとコンテキストで)

  2. More Emotional(位置情報らしく眺めるだけでも楽しいビジュアルで)



 PinQAについて詳しくは、こちらの動画を参照ください。http://vimeo.com/44554506



蛇足:めんどくさいこと言うよ
ポジティブな経験が行動に変化を与え、サービスの継続利用につながる



 井口さんもプレゼンで語っていたが、「現実の行動に移すサービスを提供したい」という言葉はすごく共感している。個人的にとても興味をもっているのは、インタレストの登録をした後のリコメンドの内容や、そこからどれほど「行動」へ移せるかである。



 好きなスポットや行動パターンはインタレストを含む。そして、自分が好きな人が好きなものは、自分も好きな可能性は高い。いいなと思っている人と「いいな」を通じて、新しい発見をすることが出来る。人となり消費である。(※人となり消費:その人が好きだから、信頼出来るから、おススメの商品を買う消費スタイル)



 “tab”は「人」をフォロー出来ないが、アイテムを通じて「tab」をフォローすることが出来る。そこから心地いい発見を体験させてくれることにとても期待している。



 個人的にとても興味をもっているのは、インタレストの登録をした後のリコメンドの内容である。「このアイテムと似たアイテム」で関連アイテムがおすすめされるが、どれだけ気持ちのいいセレンディピティがあるだろう? またモバイル版でpush通知されるのであれば、ノイズがあるとpushを切ってしまう危険性が高い。登録したアイテムのリマインダではなく、発見を与え、行動したくなるpush通知がどのぐらいされるのか大変興味深い。



 PinQAは、コンテキストを表現出来るまとめになっているのは素晴らしいと思う。ただのスポットまとめとしても利用出来るし、旅行の日程表のような使い方も出来る。




上記二つのサービスを使ってみたけど・・・


 私は滝が好きである。だからPinQAとtabでまとめを作ってみた。

 ・tab→http://tab.do/items/27365

 ・PinQA→http://pinqa.com/topics/5358



●tab:最初から作るのがとてもめんどくさいが、いったん作ると眺めていたい心地よさがある。

また、データがたまれば、それを簡単に自分のアイテムに出来るフロー(手軽さ)や、承認欲求設計(自分のアイテムが他の人に利用される)はあるので、データがたまれば見方(使い方)は変わってくる予感はする。(※行動のきっかけとなるpush通知は未体験)



●PinQA:簡単に作成出来るような工夫が感じられるが、作って終わりな感じがする。



 今回二つのサービスを使ってみて、正直なところ、行動への喚起はもとより、継続して利用するイメージもまだ沸かなかった(辛口ですみません)。それは私だけで、私の言っていることは一般的ではないかもしれない。記事を読んで使ってみる人が増えればとてもうれしい。



 ITサービスのいいところは完成でなくてもリリースし、利用してもらってどんどん改善出来ることである。なので私は、とにかくみんなに使ってもらい、いいところも悪いところもフィードバックをサービス運営側にしてもらいたいと思う。



 また、インタレストを表現するようなサービスは、同じような趣味を持った人を発見出来る可能性があるので注目している。とくに「滝」のようなマニアックなインタレストは、なかなかリアルの世界で共通のインタレストを持った人を見つけにくい。



 「スポット」との出会いは一瞬だが、人とのつながりは一瞬ではない。継続性がある。また、リコメンド精度の高さは気持ち悪さを感じてしまうが、人を通じての能動的な発見は気持ち悪さを低くするため、行動に移しやすくなるのではないかとも思う。人とのつながりをクリエイト出来るサービスは注目をしている。


次回のジオメディアサミットは7月27日(金)夕方に名古屋大学にて開催予定です。

ご興味のある方は是非!




<参考情報>

■2012/6/23 #gms2012 第9回ジオメディアサミット - Togetter

http://togetter.com/li/325637


■風観羽 情報空間を羽のように舞い本質を観る

http://d.hatena.ne.jp/ta26/20120624




著者プロフィール:鈴木まなみ



2000年からITの世界に入り、 地図、乗換と生活に密着した便利系サイトのプロデューサーと、経営企画や新規事業企画などを担当。 今の興味はSOLOMOCO(Social Local Mobile Commerce)、テイストグラフ、ビッグデータ。


位置情報サービスの企画、コンサルします。連絡先はrin2tree[アットマーク]gmail.comまで。