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 「スマホの次は何になるんでしょうね」という質問をよく受ける。スマートフォンはいずれ一人一台にまで普及するだろう。過去にここまで広く普及した電子機器、家電製品は存在しなかった。当然、社会に与えるインパクトも大きい。

 同様もしくはそれを超えるようなインパクトを持つ製品って何なんだろう?そんなものが今後登場してくるのだろうか?そういう意味の質問だと思う。

 この問いに関してこれまで僕は「スマホほど普及して社会にインパクトを与えるような製品は、もう出てこないかもしれませんね」と答えてきた。われわれはどうしても過去の延長線上に未来を予測しようとする。パソコン、スマホと来たのだから、次も何らかのコンピューティングデバイスになるのではないか、とどうしても思いがちだ。

 しかし「スマホ+クラウド」のパラダイムの次は「IoT+人工知能」のパラダイムになるはず。(関連記事:「人工知能が急に進化し始めた!」 )。 

 そしてその「IoT+人工知能」のパラダイムにはスマホのような中核デバイスは存在しないのではないかというのが、僕の予測だ。IoTとは文字通り、ありとあらゆるものがインターネットにつながるという話。社会全般、経済全般という非常に広い範囲の話なんで、1つのデバイスが核になることなどありえないと思うからだ。

 ただ「スマホの次は何か」という質問が、「次の中核デバイスは何か」という意味の質問ではなく、「スマホ並みに大ヒットするデバイスとは何か」という意味であるのなら、何らかの答えはあるかもしれない。

 つまり一人一台にまで普及するデバイスが出てくるのかどうか、という話だ。

 最近、ソーシャルロボット周りの取材を続けているのだが、ロボットってそう遠くない将来に一人一台にまで普及するのではないかと思うようになってきた。

 というのは、1つには人工知能が進化し、その結果バーチャルアシスタントと呼ばれる領域の競争が激化している、という背景がある。バーチャルアシスタントの5強と呼ばれるのが、Appleのsiri、GoogleのGoogleNow、AmazonのAlexa、MicrosoftのCortana、FacebookのMだ。

 こうしたバーチャルアシスタントがサードパーティ向けに公開されるようになってきているので、今後こうしたバーチャルアシスタントを搭載したロボットが次々と登場するのではないかと思う。(関連記事:「ソーシャルロボット百花繚乱時代に」)。

 問題はその後。ロボットに搭載されることで、人間との対話記録というデータが次々と蓄積され、その結果人工知能はますます「賢く」なっていく。「賢く」なっていけば、人間がますますいろいろなことをロボットに打ち明けるようになるだろう。有力ロボット開発ベンチャーのヴイストン株式会社、大和信夫氏は、ロボットは人間の親友になり、やがては分身のような存在になると指摘する。(関連記事:3年後、ロボットは親友になり、やがて分身になる)。

 そうなると一人一台にまで普及するのだという。確かに親友のような存在になるのなら、一人一台は必要だ。

 大和氏はさらに気になることを指摘する。「ロボットと10年以上暮らしてきた経験から言えば、ロボットが人間にとってかけがえのない存在になることは間違いない。断言できます」。

 確かにソニーの犬型ロボットAIBOのメーカー保守期間が終わったことで、AIBOの持ち主たちが困っているという話をよく耳にするようになった。AIBOの葬式や供養が行われたりもするようだ。

 人間がそこまでの愛着を家電製品や電子デバイスに持ったことがあるだろうか。

 台数では、ロボットはスマホ並みに普及する可能性がある。しかし愛着では、ロボットはスマホを大きく超える存在になる可能性がある。

 社会に与えるインパクトは、スマホどころではないかもしれない。どのようなインパクトになるのか。現時点では想像もつかない。近未来に向けた社会変化のシナリオを読むためにも、僕自身今後ロボットには積極的に関わっていきたいと思う。


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