仕事がら、ウエアラブルデバイスが社会に与える影響に関して興味を持っている。特に米フロリダのディズニーワールドで使用されている腕輪型デバイス「マジックバンド」には以前から注目していた。マジックバンドをリーダーにかざすことで、ホテルの部屋のドアの鍵も開くし、パークに入場できて、レストランやショップでの支払いができる。正式発表されているわけではないが、迷子の探索や、人の流れのモニターなどもできるようだ。マジックバンドは、ディズニーワールドというクローズドな空間の中での、都市開発の1つの形の実証実験としてとらえることもできると思う。


Warnerwood_Walt_Disney_World_MagicBands


そのマジックバンドを実際にフロリダのディズニーワールドで体験してきたので、報告したい。というのは、ディズニーは、ディズニーのテーマパークを「夢の国」として秘密のベールに包んでおきたいらしく、技術的な詳細は一切明らかにしていないからだ。英語のサイトやブログも結構調べたが、周辺取材や憶測の域を出ないものがほとんどだった。分かっているのは、ディズニーが、ディズニーのテーマパークを次のフェーズに引き上げるための一大プロジェクトの一環としてマジックバンドを捉えているということ。パーク内に無数のセンサーやリーダーを設置するなど、多額の投資をしているということ、ぐらいだ。ゲスト一人一人の動きを把握しているであるとか、監視カメラで撮った写真を写真アルバムとして売るようになるとか、憶測の域を出ないことを書いているブログなどはあったが、実際はどうなんだろうと思っていた。





▶機能は本人認証。支払いがうまくいかないことも


ディズニーワールドに行ったのは8月末。家族4人で直営ホテルに5日間滞在した。


マジックバンドはディズニー直営ホテルなどに宿泊予約すると全員に配布されるようで、米国内の居住者だと、事前に郵送されてくるようだ。僕は日本から予約したので事前にはもらえなかった。事前に入手できると本人認証がすべてマジックバンドで可能なので、空港の荷物の受け取りも、シャトルバスの利用も、チェックインも、すべてマジックバンドで可能らしが、これは検証できなかった。


ディズニーワールドに行く1ヶ月ほど前から、各パーク内のファーストパスを1日につき3枚まで、オンラインで予約できるようになっていた。同サイト上でマジックバンドの色も指定可能だった。嫁と息子たちに先に色を選ばせたので、僕のマジックバンドの色は赤色になった。


マジックバンドはホテルの部屋のアカウントに紐づけられているようだった。うちの家族はコネクティングルームといって、部屋の奥にドアがあって、そこを開けることで隣の部屋と行き来できる仕組みの部屋に滞在した。コネクトさせて一部屋のように使っていたのだが、実際は二部屋なんで、片方の部屋の鍵を開けることができるのは、僕と長男のマジックバンド。もう片一方の部屋の鍵を開けることができるのは、嫁と次男のマジックバンドだった。


クイックダイニングプランという食事プランがついてきたが、これも部屋のアカウントに紐づけられていた。1日2食とスナック一つがついたプランで、5日間滞在したので、一人10食とスナック5つのクーポンだった。僕と長男は二人で20食とスナック5つを共有するかたち。嫁と次男も二人で、20食とスナック5つを共有した。


食事とスナックのクーポンの残りの数はマジックバンドのICチップの中に記録されているのではなく、マジックバンドはあくまでも本人認証システムのようだ。なぜそれが分かったかというと、食事やスナックを購入するたびにマジックバンドをレジのリーダーにかざすのだけど、まだクーポンが残っているにもかかわらず、あるときレジの係から「もうクーポンは残ってないよ」って言われたことがあったから。「そんなことはない。まだ残ってるはず。どう証明すればいい?」って食い下がったら、「メインゲートの近くにあるCity Hall(市役所)に行って相談してごらん」と言われたので、City Hallまで行って調べてもらった。確かに残っているとのこと。「問題なく使えるはずですよ。もし次も残っていないって言われたら、ホテルに電話で確認するように言ってください」。


不安は残ったのだが、次にパーク内のカートでアイスクリームを買おうとすると、再び拒否された。「City Hallからホテルに電話してもらえと言われた」と告げると、ちょっとだけ悩んだあと、面倒だったのか「今回は、支払わなくていいよ」と、ただでアイスクリームをくれた。


その後、ホテルに戻ってホテルの売店で利用すると、そのときは問題なく正確にクーポンを認識してくれた。


恐らくホテルごとのシステムでマジックバンドを管理していて、マジックバンドを利用できるパーク内外のレストラン、ショップは、ネットワークを通じてホテルのシステムにアクセスする仕組みのようだ。ホテルのシステムへのアクセスがうまくいかないと、僕のように支払いを受け付けてくれなくなるらしい。



▶反応は「タッチ数秒」


日本のSUICAや電子マネーと比較すると、マジックバンドの反応は「タッチ1秒」というわけにはいかず、じれったい感じがした。リーダーのミッキーの形をした部分にマジックバンドをタッチすると、円の周りを光が走り始め、光の色が緑になれば「認識」。認識までに2,3秒かかる。タッチの角度が悪ければ、いくらたっても光の輪が緑にならず、マジックバンドを腕から外してタッチし直すこともあった。


部屋のドアの鍵は、それで解錠。パーク内のアトラクションのファーストパスもタッチだけで、ゲートを通過できた。


パークに入場するときは、タッチに加え、人差し指の指紋登録、指紋認証が必要になった。僕の次男は左利き。最初に登録したのが右手の人差し指だったか、左手の人差し指だったか忘れたらしく、マジックバンドのタッチ後の人差し指認証がうまくいかない。何度トライしてもリーダーが緑に光ってくれない。「そこでちょっと待ってて」と係員に言われて待っていると、首からiPad miniぐらいの大きなのタブレットをぶら下げた別の係員が来て、次男の写真を撮影。それで再度、指紋を登録して、やっと入場できた。


レストランやショップでの支払いは、マジックバンドのタッチに加えて、あらかじめ登録してある4桁のパスコードのキーパッドへの入力が必要だった。ホテルにチェックインした際に登録したクレジットカードにチャージされる仕組みらしい。電子マネーの支払いに慣れている日本人にとっては、ちょっと面倒に感じてしまう。


事前に読んだブログなどによると、マジックバンドで滞在ホテルと部屋番号が分かるので、パーク内外の提携ショップで買ったお土産は部屋に自動的に配達されるという話だったが、大きめのお土産を買ったときでさえ、ショップ店員から「お部屋へ配達しましょうか」と聞かれることはなかった。


ただ配達は確かに可能なようで、ホテルの部屋のドアのノブのところにショップの袋がぶら下がっているのを見かけた。僕の泊まっていたホテルは外部から自由に出入りできたし、遠目からでもドアノブになにかがぶら下がっているのが見える。盗難に遭わないのだろうか。こういう形の配達なら、ショップから自分で持ち帰りたいとも思った。




▶wifi完備で、SIM要らず


ただやはり、財布を部屋の金庫の中に残し、マジックバンドだけで入場、食事、買い物できるのは本当に便利だった。パークの外に、ダウンタウンディズニーと呼ばれる地域がある。東京ディズニーリゾートで言うところのイクスピアリに相当するようなショッピング、ダイニングエリアだ。そこのショップ、レストランでもマジックバンドで支払いが可能だった。


またダウンタウンディズニーやホテル内を含むディズニーワールド全域で、wifiが問題なく使えた。必要であればSIMフリーiPhoneに現地のSIMを挿そうと思っていたのだが、まったく必要なかった。音声通話はLINEの通話機能を利用した。


ストップオーバーのヒューストンの空港でも、フロリダのオーランドの空港でも、無料でwifiを利用できた。なので、現地SIMはまったく不要。今年4度目の渡米だったが、現地SIMを利用しなかったのは初めてだった。




▶「おもてなし」はやはり日本が上


技術的な話ではないが、サービス面では東京ディズニーリゾートの方が上ではないかと思った。まずキャストの数が違うように思う。東京ディズニーリゾートでは、あちらこちらにキャストがいて、気軽に声をかけて道を聞くことができる。ディズニーワールドでは、見渡してもすぐにキャストを見つけられないことがあった。


またこれは完全に個人的な感想なんで本当のところは分からないが、東京ディズニーリゾートのキャストのほうが愛想がいいように思った。


東京のキャストは、いつ話しかけても笑顔で答えてくれるし、アトラクションの係の人もいつも笑顔を絶やさない。フロリダのキャストは、笑顔の人も多かったが、アトラクションの係の中には、たまに無表情でつまらなそうに働いている人もいた。


またフロリダでは、たまたまかもしれないが、スペースマウンテンに上がるエスカレーターが故障していて、歩いて登らなければいけなかった。うちの家族は大のディズニー好きで、もうここ何年も、年に最低2回は東京ディズニーリゾートに行くが、これまで東京ディズニーリゾートでエスカレーターの故障に出くわしたことはない。



▶結論


ウエアラブルデバイスだけで、本人認証、決済ができるのは本当に便利だと思うが、大規模なシステムを問題なく運用するのは、やはり大変なのだろうと思う。


技術やシステムの新規性では米国に軍配があがるものの、それをきっちりと完成度高くサービスにまとめるというところが、日本の強みではないだろうか。日頃から感じていることだが、ディズニーワールドへの旅行を通じて再確認したような気がする。


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