米Googleが400万冊の品ぞろえを誇る電子書籍サービスを準備している。Appleのサービスは6万冊、Amazon.comは50万冊といわれるので、品ぞろえではGoogleが一気にトップに躍り出ることになる。Googleが中間マージンをほとんどとらないことや、価格設定権を主張しない可能性があることなどから、米国のほとんどの出版社がGoogle向けに電子書籍を提供することにしたようだ。だがこの圧倒的な品ぞろえでGoogleが電子書籍市場を独占するのかというと、そんなことはない。
 Googleが電子書籍販売事業を準備している話は以前から報じられている。5月4日にはThe Wall Street Journalが報じ、それをベースにCNETが記事を書いている。ニューヨークで開催されたイベントのパネル討論会でGoogleの戦略パートナー開発マネージャーであるChris Palma氏が明らかにしたようだ。一連の報道によると、ポイントは以下の通り。



・サービス名称は「Google Editions」

・書籍名を検索し、結果をプレビューし、気に入れば購入できる。

・購入してもクラウド上でデータが保存される

・ダウンロードしないので、著作権管理技術の煩わしさがない

・ブラウザで読めるので、どのデバイスからも読める。

・オフライン読書に対応するためのモバイルアプリを提供する

・著者、出版社、書店、サイトが自社サイト上にGoogle Editionsを設置し販売できる。

・Googleは中間マージンをほとんど取らない

・価格決定権をGoogleが持つのかどうかは、まだ決まっていない

・6月末から7月のサービスイン

・スタート時には50万冊を用意



 今回、米国のほとんどの出版社の協力を取り付け400万冊の電子書籍を確保したという話を最初に報じたのは、どうやら共同通信らしい。ニューヨーク発の共同通信電によると、「共同通信の取材に対し、グーグルが明らかにした」となっている。その共同電をJapan TodayがGoogle backed by almost all U.S. publishers on digital bookstoreという記事で転電。それをまた米国のメディアやブログが後追いしている。





▼Googleが品揃えに成功した理由



 図書館の蔵書を電子化するプロジェクトを通じてGoogleは、昨年10月の時点で既に1000万冊の書籍を電子化している(発表文)。権利保持者の合意を得られれば、あっという間に電子書籍販売サービスを開始できるわけだ。Googleが中間マージンをほとんど取らない、価格決定権にも固執しないのであれば、多くの著者、出版社、書店が参加するのも当然のことだろう。





▼Googleが独占するとは限らない理由



 共同通信は別の解説記事で「競合他社が展開する電子書籍と比べて電子化の規模が段違いに大きく、グーグルによる市場独占を懸念する声が強まりそうだ」と書いているが、そんなことはない。



 価格決定権を出版社が持てば、紙の書籍とバッティングしない価格設定になるだろう。一方でAmazonやAppleの電子書籍ストアは、特にベストセラーを特価で販売するもよう。ユーザーは当然Amazon、Appleに流れる。それにAmazonには過去のユーザーレビューなどの情報の蓄積がある。(関連記事:Tech Wave:iPadが発売されてもAmazonがびくともしない2つの理由【湯川】



 Googleが品揃えの豊富さだけで、市場を独占することは不可能だろう。





▼どのデバイスで読めるようになるのか



 AmazonのKindleでは無理。米大手書店のBarnes & Nobleの電子書籍リーダーNookでもGoogle Editionsが利用できるようになるとは思えない。



 ソニーの電子書籍リーダーにはGoogle Editionsが搭載される可能性はある。



 GoogleのAndroid、Chrome OS搭載機器にはGoogle Editionsは当然、搭載されるだろう。



 iPhone、iPadにはどうだろう。以前のAppleなら自社製品とバッティングするという理由だけでサードパーティーのアプリやサービスを拒否したけれど、独禁法関連の予備調査が始まるこの段階ではGoogle Editionsアプリを受け入れざるをえないんじゃないだろうか。(関連記事:Tech Wave:独禁法関連で米政府がAppleを予備調査へ=WSJ紙【湯川】





▼おまけ



 日本ではどうなるのだろう。



 「紙との共存ができるなら協力するが、紙の出版を維持できないなら協力はできない。こちらがコンテンツを出さなければ向こうも(電子書籍端末を)出すことはできない」というのが業界団体の事務局長の考え方だから、日本で電子書籍が急速に普及するとは思えない。(関連記事:日本が2年以内に電子書籍元年を迎えることはない【湯川】