TechWaveの理念、目標である「世界との架け橋になる」に沿って、電子書籍、紙の書籍の両方で英語の勉強法表に関する本を出します。(関連記事:TechWaveは世界との架け橋を目指します : TechWave



 電子書籍のほうは「iPhone的英語勉強法」、紙の書籍のほうは「iPad英語学習法」というタイトルになりました。タイトルは違いますが、中身はほぼ同じです。紙の書籍のほうは7月30日発売です。



 この本のコンテンツの一部をTechWave上で公開していきます。


話せるから自信があるのではない。自信があるから話せるのだ



 なぜ自信を持つことが重要なのか。それは「自分は英語を話せる」という自信を持たない限り、英語を話せるようにはなれないからだ。ちょっと逆説のように聞こえるかもしれないが、英語が話せるようになって初めて「英語を話せる」自信がつくのではなく、その自信がついてから英語が話せるようになるのである。



 アメリカに住み始めて2、3年たった頃の話だ。ファミリーレストランのようなところで、アメリカに来たばかりの日本人の男友達とアメリカ人女性の3人で雑談していた。男友達が彼女に一言、二言話しかけた。何を言ったかは覚えていないが、多分簡単なフレ−ズ、Are you hungry?(お腹空いた?)、そんなようなことだった。



 「言ってることが分からない」といった感じで彼女は首を傾げた。一方、男友達は助け舟を求めるような困った表情でこちらを見た。私は彼女の目をまっすぐに見てAre you hungry?と聞き返した。彼女はにっこりと笑ってNo, I'm not.と答えた。



 「えー!どういうことだよ。何が違うんだよ!」男友達はまるで詰め寄るような勢いで私に聞いてきた。確かに彼の英語が間違っていたわけではない。発音が特に聞きづらいということでもない。問題はそこではなかった。


 私にあって彼にないもの。それは「英語を話せる」という自信だった。人間のコミュニケーションの80%は言葉以外の部分で成立するという話を聞いたこと がある。手振り、身振り、表情、イントネーション、間の取り方などなど、実際に交わされた言葉以外の要素を総合的に判断して相手からのメッセージを理解するものなのだそうだ。



 男友達の「通じるだろうか、どうだろうか」という不安がアメリカ人女性に伝わったのだろう。彼女は彼がAre you hungry?と言ったように聞こえたのだが、彼のボディーメッセージがあまりに不安げで、聞き取れたのか彼女まで自信が持てなかったのだろう。それで 「言っていることが分からない」という反応になってしまったのだ。



 私は自信を持ってAre you hungry?と聞いた。聞き取れないのなら、それは私の発音のせいではない。聴力か、注意力か、何なのかは分からないが、そのせいである。それぐらいの態度で話したものだから、たとえ聞き取れなかったにしろ、私が言ったことを理解しようと彼女のほうで最大の努力を払ったのである。



 「話せる」という自信を持ったほうが、会話は通じる。自信がなければ、通じないのである。



 ではどのようにして、「話せる」という自信を得ることが出来るのだろうか。



(中略)



簡単なフレーズを徹底マスター。それ以外は見切る





 もちろんある程度のレベルは必要だが、それは中学で習う程度だと思う。普通の大人なら既に達しているレベルだが、ただそこを徹底的に勉強することが大事だ。簡単な表現を完璧なまでにマスターする必要がある。



 語学学校の上級コースに進んだことのある人は分かると思うが、かなりレベルの高い表現を学ぶ。大統領のスピーチや医学書を読むなどの授業もある。しかしそういう高度で難解な表現を覚えても、「話せる」自信はつかない。英語圏の人から「英語を話せる」とはみなされないのだ。ここ が、今日の日本の英語教育の最大の問題点だと思う。



「湯川さんは英語を完璧に話せるんですか」とよく聞かれる。「英語のあらゆる単語を知っているんですか」と聞かれることもある。そんなことはない。聞き取れないこともあるし、知らない単語だってたくさんある。それでも「英語を話せる」と胸を張ることが出来る。



 考えてもみてほしい。あらゆる日本語の単語を知っている人などいるだろうか。私などは、この歳になっても初めて知る言葉や四文字熟語が山のようにある。最近人気の「おバカタレント」と呼ばれる人たちは、びっくりするぐらい簡単な表現さえ知らないことがあるが、それでも彼らを「日本語を話せない」とは見ない。本人たちも「自分は日本語を話せない」とは思っていない。



 「話せる」という自信を得るためには、必ずしも難解な表現を知っている必要はない。英語でも同じである。自信をつけるための単語、表現をまず最初にマスターし、それ以外はあえて覚えない。大事なのは「見切る」ということだ。



 高校卒業後の1年間、私は大阪にある英語の専門学校に通い、そのあと渡米した。そこで痛感したのは、自分が非常に簡単なレベルのフレーズを知らなさ過ぎるということだった。上級クラスだったにもかかわらずだ。長く難しい単語など使わなくても生活は出来るが、そういった簡単なフレーズを知らなければ「英語が分からない人」とみなされ、相手がこちらの発言を疑って聞くようになる。相手が疑いを持つだけで、正しい英語を話していても伝わらなくなるのだ。



 例を下に出してみよう。実際に英語圏で生活すると、誰もが知っているようなフレーズである。読者の皆さんは幾つご存知だろうか。1つでも知らなければ「英語が出来ない人」として扱われてしまう。



You are pulling my leg.(ご冗談でしょ)

I miss you.(あなたに会えなくて寂しい)

That's a turn off.(いやだな、それ)

Can you put me up for the weekend?(この週末に泊めてくれる?)

Don't put me down.(バカにするなよ)



 キーとなるのは、take、have、put、get、pick、push、pullなどの簡単な単語である。こうした簡単な単語の組み合わせが英語には無数にある。そして実は英会話のほとんどは、こうした表現で出来てしまう。



 難解な単語は知らなくてもいい。分からなければ、どういう意味か聞けばいい。聞けるというのが、ネット上の双方向のコミュニケーションのメリットである。このメリットを利用して英語を勉強すべきだろう。



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