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 昨日大きな話題になった株式会社gumiの国光宏尚さんの記事「日本のソーシャルゲームに追い風、日本はスマホソーシャルゲーム市場で世界を獲れる!【gumi国光宏尚】 : TechWave」の中に「プロジェクト・スパルタン」という名前が出てくる。



 Facebookが、次世代ウェブの表示言語として注目を集めるHTML5をベースにしたウェブアプリ(見た目は専用アプリと変わらないが、データはすべてネット上にあるブラウザーベースのサービス一種)やゲームのプラットフォームの開発計画を進めているという情報が飛び交っている。「プロジェクトスパルタン」と呼ばれる開発計画で、どうやらiPhoneのブラウザー「モバイルSafari」を使ってFacebookのサイトにアクセスすれば、その上でHTML5ベースのウェブアプリやゲームが利用できるようになるもようだ。




 国光さんは、このプロジェクトが実際にサービスインすれば、ユーザーや開発者はAppleのアプリ市場「AppStore」を通じてアプリを売買する必要がなくなり、Appleの影響力が低下すると指摘している。



 この「プロジェクト・スパルタン」とはどのような開発計画なのだろうか。現時点で分かっている情報をまとめてみた。



 この開発計画の存在を最初に報じたのは米TechCrunchだった。6月7日付のTechCrunchによると、既にソーシャルゲーム大手のZyngaやメディア大手のHuffington Postなど80グループほどのサードパーティ・デベロッパーがFacebookのモバイルプラットフォーム向けにアプリを開発中という。TechCrunchは6月7日の時点で「多数のアプリが完成直前で、数週間後には正式発表の運びとなるようだ」としているが、8月23日現在、まだサービスインしていないし、発表もない。



 ただTechCrunchはモバイル機器上で動くプロジェクト・スパルタンのアプリを実際に見たらしい。それによると、次のような感じらしい。



 それはこんな具合だ。モバイルデバイス上でウェブ版のFacebookを開くと、新しいアプリを並べたドロップダウンメニューが表示される。好みのアプリをクリックするとそれがロードされる(サーバはアプリの開発者によって異なる)。同時にFacebookの用意するラッパーがアプリを包み込む。このラッパー層はアプリにFacebook Creditsを含むさまざまなFacebookの機能を提供する。





 アプリを包み込むようなラッパー(包み紙の意味)と呼ばれるプログラムが、アプリプログラムと同時にダウンロードされるのだろう。そのラッパーには、Facebook CreditsやFacebookウォールへの自動書き込み機能などが含まれるものとみられる。



 Facebook Creditsは日本語ではFacebookポイントと呼ばれる仮想通貨、決済システムのことだ。国光さんは、アプリのプラットフォームに期待するのは集客力と決済システムだと指摘するが、Facebookのプロジェクト・スパルタンには、ソーシャルのクチコミという集客力と、Facebook Credits(ポイント)という決済システムの両方を併せ持つことになる。



 世界的に見ればFacebookはソーシャルの情報伝播のインフラとして絶対的な地位を既に確保している。決済システムのほうはまだそれほど普及していないが、Facebook Creditsに今後注力していくことは関係者がこれまでに明らかにしているので、いずれ普及することだろう。そうなれば確かにAppleのAppStoreにとっては脅威となる可能性がある。(関連記事:ソーシャルメディア時代の決済インフラ狙うFacebookの野心【湯川】 : TechWaveFacebookの仮想通貨がアジアのリアル店舗で購入可能に【湯川】 : TechWaveFacebookの収益源は仮想通貨に、将来の広告配信も否定せず=Zuckerberg氏【湯川】 : TechWave



 さて6月にTechCrunchが報じてからは、しばらくは追加情報と呼べそうものは何も浮上してこなかったが、ここにきて幾つか記事がウェブ上にアップされ始めた。米Bloomberg通信の7月26日付のFacebook Said to Be in Talks to Bring Credits to Mobile Browsers (FacebookがモバイルブラウザーにFacebook Creditsを導入する方向で交渉しているもよう)という記事によると、モバイル向けゲームやアプリの決済システムとしてFacebook Creditsを利用するほか、友人がプレーしているゲームの最新情報がニュースフィードとしてページの右側に表示されるようになるという。同通信は、3人の事情通からの情報として報じている。(この右側に表示されるフィードだが、先日Facebookが発表した「ゲームティッカー」のことだろう。ゲームティッカーは画面右上に新設されセクション内で、友達のプレイ状況、スコアや、ゲーム内の達成状況などがストリーム形式で表示されるもので、友達が何をプレイしているのかをチェックすることで、自分に最適な新しいゲームを見つけることが簡単にできるらしい。この仕組みで、AppStoreやAndroidマーケット以上の速度でユーザーを獲得しようというわけだ。)







 またモバイル娯楽アプリの米MocoSpace社は先週、プロジェクト・スパルタン向けにHTML5のゲームを開発するデベロッパーに対して総額100万ドルのファンドを用意したと発表した。発表文には「プロジェクト・スパルタンがいつローンチするのかは確かではないけど、FacebookがHTML5を信じていることは確か」と書かれている。(参考記事:HTML5 Apps Spurred by Game Devs Working on Facebook's Project Spartan



 米ReadWriteMobileが接触した開発者の多くは「(プロジェクト・スパルタン)が本当かどうか知らない」という返事ではなく「そのことについては話できない」という反応だったという。



 さてプロジェクト・スパルタンが実現すると本当にAppleに打撃を与えるのだろうか。HTML5のソーシャルゲームのフレームワークを提供する米MoblYng社のStewart Putney氏がReadWriteMobileに語ったところによると、先に打撃を受けるのはGoogleのAndroidマーケットのほうだという。OSはGoogle、ハードウエアはメーカ各社が設計するためにハードとソフトの連携がiPhoneやiOSのようにうまくいかず、ダウンロード型アプリであっても質的にウェブアプリとそう変わらない状況。なのでFacebookのアプリ市場がAndroidマーケットをすぐに追い抜くだろうとしている。