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 米Facebookの新戦略がどのように世の中をソーシャル化していくのを理解するために、先に少しばかり技術的なことを解説しておきたいと思う。最近ではIT業界内でほとんど一般的に使われるようになったソーシャルグラフという言葉。人間関係のデータという意味で使われることが多いが、もともとはFacebook上のユーザー同士のつながりを示すグラフという意味で使われ始めた。概念的には次のような図になる。(Zuckerburg氏の基調講演のビデオからスクリーンショットを撮ったので、真ん中に再生の矢印マークがありますが、無視してください)



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 この人間関係のつながりを広く一般の事象にまで広げたのが、昨年の開発者会議「f8」で発表されたオープングラフだ。ウェブ上に散りばめられた「いいね!」ボタンを押すことで、「〇〇さんが『いいね!』と言っています」というメッセージがFacebook上に表示される仕組みだ。人間同士のつながりだけでなく、「いいね!」することでモノとの関係のデータもグラフの中に取り込むことができるようになったわけだ。
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 そして先週開催された今年の「f8」ではオープングラフがさらに進化し、「いいね!」ボタンを押さなくてもユーザーと一般事象とのつながりをグラフの中に取り込めるようになる。具体的にはFacebook上のアプリを新しいオープングラフの技術仕様に準拠させることで、アプリを使ったアクティビティの内容が自動的に情報として発信されるようになるわけだ。



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 アプリを通じてニュース記事を読むと「〇〇さんが〇〇という記事を読んでいます」という情報が、アプリを通じて音楽を聞くと「〇〇さんが〇〇という曲を聞いています」という情報がFacebook上に自動的に流れるようになる。そんな仕組みだ。



 ただそうした些末な情報のすべてがFacebook上のニュースフィードに流れれば、うんざりしてしまう。そこでFacebookでは画面の右端にティッカーというコーナーを新設した。



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 ティッカーとは電光掲示板を意味する。新しい情報がまるで電光掲示板のように次々と流れていくコーナーだ。重要な情報も重要でない情報もどんどんと流れていくようになっている。そこにたまたま目が行って、友達のアクティビティの中から興味ふかいものを見つけてくることもある。もしくは重要な情報は、Facebookのシステム側で重要度を自動的に判断して、メインの情報コーナーであるニュースフィードに表示するようになる。例えば、友人が音楽のプレイリストを作成するということはそれほど頻繁にあるわけではないので、「〇〇さんがプレイリストを作成しました」という情報がニュースフィードに流れるという仕組みだ。複数の友人が偶然同じ音楽を聞いているという事態も頻繁にあるわけではないので、システム側が重要情報と判断し、「〇〇さんと〇〇さんが、〇〇という曲を聞いています」という情報をニューズフィードに流すようになっている。



 またアプリを最初に利用するときに、どのような情報をFacebook上で流すのか、だれに流すのかを、あらかじめ設定できるようにもなっている。



 オープングラフのこうした新機能で、ユーザーはアプリを通じて自分自身のことを友人に知らせることができるようになる。友達のことをもっと深く知ることができるようになるという。



 Mark Zuckerburg氏は、Facebookを友達の間に存在する言語のようなものだと表現する。これまでは「〇〇さんが〇〇を好き」というフレーズが決まっていて、そこには「〇〇」という名詞しか表現することができなかった。これからはオープングラフの新機能で、「〇〇さんは〇〇している」という動詞を表現できるようになると言う。



 「音楽を聞いています」「ニュース記事を読んでいます」「映画を見ています」「ジョギングをしています」「料理をしています」などなど。言語に動詞が加わったことで、ありとあらゆるアプリを使って友達に対して自分自身を表現できるようになるのだという。



 Zuckerburg氏は、このオープングラフの新機能を通じて音楽、映画、テレビ、新聞などのメディアの消費の形が根本から変化し、メディア産業自体も根本的に変化すると予測する。次の記事では、メディア関連アプリについて解説してみたい。



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