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 米Google傘下の動画共有サイトYouTubeがプレミアムコンテンツの拡充を急いでいる。米ハリウッドの複数のコンテンツ制作者を手始めに、ディズニーなどの大手とも提携。さらにはKポップの専門チャンネルを開設するという情報まで飛び出した。



 韓国のYonhap newsが伝えたところによると、韓国を訪問中のGoogleのEric Schimidt会長が韓国の李明博大統領との会談の中でKポップの専門チャンネルをYouTube上に設けることを約束したという。



 また英ロイター通信によると、YouTubeはWalt Disney社傘下のDisney Interactiveと業務提携、共同ブランドで制作したDisneyのビデオをDisney.comとYoutubeの両方で来年から公開していくという。


 New York Timesによると、両社合わせて総額1000万ドルから1500万ドルをかけてオリジナルを動画のシリーズをDisneyが制作するもよう。表面的にはそれほど大きな提携のようには見えないが、NY Timesによると、両社は今回の提携に大きな期待を寄せており、今回の提携がいずれ大きな意味を持つことになるという。



 YouTubeは素人コンテンツの共有サイトというイメージが強いが、プロやセミプロのクリエイターの制作支援に本格的に乗り出しており、今年7月にパートナー助成金プログラムを発表している。YouTubeに投稿されている動画の視聴回数やサブスクライバー数、成長率、動画の質などを基にクリエイターを選別し、助成金プログラムを案内。クリエイターが提出した制作計画を審査し、見込みのあるものに助成金を支払うというもの。助成金プログラムとして、総額5億ドルを用意しているという。



 また10月28日には、新しく約100の専門チャンネルの開設を発表している。大手ニュースメディアやアーティスト、音楽プロダクションなどが自分たちの専門チャンネルでオリジナルのコンテンツを配信することになるという。



 新設されるチャンネルは、このページで紹介されているが、ロイター通信などのニュースチャンネルや、マドンナが登場するダンス番組のチャンネル、スポーツチャンネルなど、幅広いチャンネルが提供されることになる。



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蛇足:オレはこう思う



 先月28日の発表文を読めば、コンテンツ拡充に対するYouTubeの本気度がうかがえる。発表文には次のように書かれてている。

「クールな技術が偉大なエンターテインメントと出会うと、素晴らしいことが起こる。CATVは視聴の可能性を、一握りのチャンネルから数百のチャンネルに拡大した。この20ー30年でわれわれはMTVやCNNなどといったすばらしいメディア体験を手にすることができた。そして今日、ウェブは、さらに多くの才能あふれるコンテンツ制作者のエンターテインメントをわれわれに届けてくれようとしている。次世代を形成するようなチャンネルはYouTube上で生まれ視聴されるようになる」



 テレビの第一世代は地上波。次にCATVや衛星放送といった第二世代がテレビ視聴の形を大きく進化させた。そして第三世代のテレビ視聴はYouTubeがリードしていく、とYouTubeは宣言しているわけだ。



 しかもYouTubeはコンテンツ制作者と直接つながろうとしている。地上波テレビ局やCATV局に取って代わろうとしているわけだ。



 果たしてコンテンツ制作者は、YouTubeの誘いにどれだけ本気で乗ってくるのか。



 それはすべて金次第だと思う。



 米国でも地上波とCATVの広告の市場規模は、インターネットの動画広告の市場規模の数十倍と言われる。地上波やCATVにコンテンツを流すほうが儲かるので、今はネット上に優良コンテンツを出そうという制作者はそう多くない。



 でもそれは鶏と卵の関係にしか過ぎない。巨額資金の投入という「力技」で優良コンテンツをネット上に集めることができれば、広告予算もネットに流れるのは間違いない。



 DisneyやKポップに対してYouTubeが今後どれほど資金的に支援するのか、レベニューシェアの割合はどうなっているのか、など分からないことが多い。しかし、機が熟したと見たYouTubeがその「力技」に乗り出した可能性があるわけだ。



 またDisneyクラスの大手コンテンツ制作者のチャンネル開設の発表も近く予定されているという情報も聞こえてくるので、YouTubeはかなり本気なのかもしれない。



 僕自身は、テレビのビジネスモデルって非常にうまくできていて、あと50年くらいはテレビって安泰だと思っていたのだけれど、果たしてどうなることやら。