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 女子サッカーなでしこジャパンのワールドカップ優勝が、震災後打ちひしがれていた日本人に元気を与えたというのは事実だと思うんだけど、実は僕自身、彼女たちが優勝するまで彼女たちの存在自体知らなかった。「いや、そういうものですよ。日本にはマスメディアで取り上げられることはなくても世界クラスで戦えるアスリートってたくさんいるんです」と株式会社ドリーム・フォーの笹本裕さんは語る。「世界レベルの選手でもマイナーなスポーツだったりしたら世界大会への渡航費にさえ困っている状態。企業やメディアが彼らをスポンサードできないのなら、われわれファンが支援できるんじゃないだろうか。支援するほうも、支援を通じて元気をもらえるんじゃないだろうか。そう思ったんです」。



 一般消費者が支援するクラウドファンディングの仕組みとしては、米国のKickstarterのような先行事例もある。ただ日本では消費者保護の観点から金融庁の厳しい指導があり、米国のように資金移動を自由に行えないのが現状。そこで株式会社ドリーム・フォーでは、日本に合ったクラウドファンディングの形を模索して研究を重ね、このほどソーシャル・シーディング・サービスWESYMをスタートさせたのだという。




 WESYMの特徴の1つは、各種ポイントサービスとの連携。ECサイトやオンラインゲーム、クレジットカードなどのポイントの中で、電子マネーに交換できるポイントがある。そうしたポイントの中で、使用目的を思いつかない余ったポイントを、ポイント交換サービス経由でWESYMの中のお気に入りプロジェクトに提供できるようになっている。



 2つ目の特徴は、パラリンピックの選手や海外の選手のマネジメント事業を手がける会社との提携だ。こうしたクラウドファンディングにとって、支援プロジェクトと支援者は鶏と卵の関係。支援プロジェクトが多ければ支援者が集まるし、支援者が集まれば支援プロジェクトも増えてくる。その好循環に入るまで、多くのユーザーが支援したくなるようなスポーツ、エンタテインメントのプロジェクトをWESYM側でまずは揃えようというわけだ。将来はスポーツ、エンタメの領域を超えた支援のプラットフォームにしていくのが目標だが、当面はこれらの領域に注力したいと笹本氏は言う。



 3つ目は、アジアとの連携。笹本氏自身、前職のマイクロソフト時代にシンガポールを拠点にアジア各地で仕事をしてきた。その経験を活かし、シンガポールや中国などのメディア企業との連携を模索しているという。「日本とアジアを結び、規模を拡大できるようなプラットフォームにしたい」と笹本氏は抱負を語っている。







蛇足:オレはこう思う



 支援する側とされる側。どちらのほうが得なのかというと、「する側」なんだと最近強く思うようになってきた。応援したい人やプロジェクトを応援することって、本当に気持ちがいいから。エネルギーをいっぱいもらえるから。



 支援、応援、寄付などをもっと手軽にできれば、より多くの人が支援するようになるだろうし、そうすることでより多くの支援する人たちがハッピーになっていくと思う。



 これからの日本は、こうした支援する仕組みがどんどん生まれてきて、社会の活動の中心になっていくのだと思う。「金儲けしたい」という動機以上に「支援してハッピーになりたい、エネルギーをもらいたい」という動機で、世の中が回り出すのだと思う。特にスポーツ、音楽、執筆などの領域は、そうした仕組みで支えられるようになるんじゃないだろうか。そういう意味でWESMには期待したい。



 こうした仕組みは、もっと支援者にとってのメリットを前面に押し出すデザインでもいいんじゃないかな。「いいことして気持ちいい。だれにも知られないけどさ」という程度のメリットじゃなくて、「支援するとめちゃくちゃエネルギーもらえて楽しいよ。ちょーハッピーになるよ」ということが分かるデザインのほうがいいんじゃないだろうか。これまでのボランティア活動のイメージじゃなく、もっとエネルギッシュで楽しい活動に仕上げていくべきだと思うよ。



 笹本さんが気づいているのかどうかは知らないけど、WESYMがポイント制度を利用しているのってすごいことだと思う。これからどうなるか分からない(?)日本円という貨幣制度のサブシステムとして、各種ポイント制度の重要度が今後増してくるのは間違いないと思う。場合によっては「円」を超える信頼度を持つポイント制度が登場するかもしれない。そう考えると、今からポイント制度をベースに仕組みを作るというのは、実に今後の社会の方向性に沿ったことだと思う。信頼度や評価というものをベースにしたポイント制度の構築、普及にWESYMが関与してくればおもしろいと思う。