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images ビジネス向けSNS最大手LinkedInは、プレゼンテーションファイル共有サービスのSlideShareを1億1900万ドルで買収すると発表した。発表の中でLinkedInのCEO、Jeff Weiner氏は、「プレゼンテーションはビジネスマンの経験と知識の表現であり、プロとしてのアイデンティティを形成するもの」と語っており、公開されたプレゼンファイルが取引先や人材を探す上で重要な手がかりになるという考えを示している。また現行のSlideShareのサービス自体は引き続き運営するとしているが、LinkedIn上にSlideShareを組み込む形についてはこれからの検討課題という。
 LinkedInの公式ブログによると、LinkedInの登録メンバーは1億6100万人、月間ユニークユーザーは1億700万人、1秒間に二人のペースでユーザーが増えているという。一方SlideShareの月間ユニークユーザーは2900万人、アップされたスライド数は900万個に登るという。



LinkedIn and Slideshare
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蛇足:オレはこう思う



 確かにLinkedInとSlidShareって相性がいいと思う。買収金額に見合うかどうかは知らないけど。LinkedInのCEOが言うように、プレゼンを見ればその人のアピールポイントが一目瞭然だもんな。



 今後Slideshareが転職の際の重要な情報源になるかもしれないので、今までSlideshareを単なるファイルのストレージ的に使っていた人も、アップするスライドの種類や内容のことを再考しないといけなくなるかも。あまり講演する機会のない人でも、自分をアピールするために講演しないんだけどプレゼンファイルだけ作ってアップしておく、というようなケースがでてくるかもしれない。



 さてFacebookのMark Zuckerburg氏は以前、「SNSは最終的には1つに統合される」というような見解を述べていた。この意見に異論を述べる人もいて、LinkedInのようなビジネス向けSNS、ソーシャルゲームのSNSなど、数個のSNSは共存できるという考えもある。少なくとも現時点では、LinkedInはFacebookに統合されることなく業績を伸ばしている。



 もちろんこれは表現の違いだけかもしれない。戸籍のようなSNSとしてFacebookが一番下のレイヤーに存在し、その上にLinkedInなどの特定目的のSNSが存在するようになる、というようなことをZuckerburg氏は言っているのかもしれない。



 その表現の違いはどうであれ、LinkedInがFacebookに飲み込まれることなく独自の立ち位置を築いていることだけは事実だろう。



 僕自身、LinkedInの立ち位置は非常に面白いと思う。



 人間関係には「強い絆」と「弱い絆」の2種類があり、一日のうちのコミュニケーションの大半は「強い絆」の間で行われることがデータとして分かってきた。(関連記事:インフルエンサーより「仲のいい少人数グループ重視」の時代へ 書評「Grouped」【湯川】)ところが「強い絆」は情報源が同じであることが多く、新たな情報との出会いが少ない。新たな情報は「弱い絆」から得ることが多い。一方で議論は「強い絆」同士のほうが無駄なく進めることができる。つまり人間にとって「強い絆」も「弱い絆」も両方重要なわけだ。(関連記事:弱い絆から情報を得て、強い絆で議論を深める 人間関係をベースにしたサービスの必要性【湯川】



 「強い絆」部分はFacebookや、mixi、LINE、「弱い絆」部分はLinkedInやソーシャルゲームSNSなどが担うようになるのではないだろうか。



 2010年代の広告、マーケティングは、こうした「強い絆」「弱い絆」の特性を考慮しながら、横のつながりの中で情報をどう流すかがテーマになる、と言われている。その意味で、LinkedInの価値が今後ますます伸びるのではないだろうか。



 そしてそうしたマーケティングが主流になる中で、ちょっと人気があるくらいのサービス、アプリではこうした新しいマーケティングから十分な収益を得るまでには至らない。だから買収されるしかない。Instagramも、Slideshareもそうだ。これくらいの中堅レベルでも買収されるしか道はないんだ。



 単体で生き残るのは、ソーシャルゲームのようにそれ単体で莫大な収益を上げることができるサービスか、教育や物販などのようにITがなくても成立していたものをIT化したようなサービスだけ。あとはFacebookやLinkedInのようなプラットフォームに買収されるしかないのだと思う。



 そう考えると、C向けのおしゃれなアプリはプラットフォーマーのいるシリコンバレーでビジネスをするのが有利かもしれない。