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 未来を読もうと努力はしているが、本当のところ自分には未来を読む力はあまりないと思っている。でもネット関連の起業家や起業家予備軍から意見を求められることが多いので、一度は文章にしておこうと思う。



 基本的にはどんなサービスでも「やってみなはれ」と思っている。やってみないと分からないことが多いし、失敗したとしても貴重な経験を得るからだ。



 それでもこれは厳しいんじゃないかと思う領域がある。例えば1つには「おしゃれでソーシャルなサービス」がある。友達の友達や知らない人の中から、自分と気が合いそうな人とつながることができる、というタイプのサービスだ。去年くらいからこの種のサービスが数多くローンチされ、話題になったり投資を受けることに成功したサービスも多い。しかしその後、そのうちの多くは成果をあげていない。にも関わらず、今だに同様のサービスを開発し「見てください」とピッチにくる人が後を絶たない。



 話を聞いてみると確かにおしゃれに作ってあるし、新しい友人ができるという社会的な価値を提供できるようにもなっている。



 優れたサービスには違いないが、ビジネスとしての成功は難しいと思う。なぜならマネタイズができないからだ。
 そうしたサービスって広告が主な収入源になるのだろうけど、人間関係をベースにしたいわゆる「ソーシャル広告」と呼ばれる新しいタイプの広告・マーケティング・販促手法は、未だ確立していない。その兆しは見えてきているが、大きな産業になるのかどうか実のところまだ分からない。(関連記事:ソーシャル広告世界最先端 mixi Xmas、NikeiDを成功させたバスキュールが見る未来の広告とは【湯川】



 ただなるかもしれないという期待感がFacebookの上場を可能にしたし、LINEへの期待につながっている。



 恐らくものすごい数のデータが集まってそれを解析することによって新しい広告、マーケティングが実現するとは考えられている。(関連記事:Facebookの次の覇者は、さらに多くの情報を収集、分析できる企業【gumi国光宏尚】



 しかしそれが実現するには莫大な量のデータが必要で、勝ち残るのはソーシャルなプラットフォーム1つか2つだけ。あとのソーシャル系サービスはその巨大プラットフォームと連携するか、巨大プラットフォームに買収されるしかない。InstagramがFacebookに買収されたのは当然の結末である。



 つまり巨大プラットフォームになれないソーシャル系サービスは、よくて売却益を得るか、売却できないなら資金が尽きて運営を諦めるしかないのだと思う。ソーシャルプラットフォームは資金力がものを言う段階に既に移行しているのだ。



 なので「おしゃれなソーシャル系サービス」について僕は高評価を与えられない。



 一方で高く評価できるのは、マネタイズが明確なサービス。イチオシは、ソーシャルゲーム。ソーシャルゲームこそが21世紀の娯楽の中心になると思っているし、ゲームの要素を持った教育や物販など派生ビジネスも無数に生まれてくると考えている。(関連記事:ソーシャルゲームは日本が世界に誇る産業になる#IVS【湯川】



 2つ目はBtoBサービス。ネットの要素を加えることで大きな収益を上げることができる業界はまだまだあると思う。例としては株式会社ROIを上げておこう。(関連記事:O2O成功のカギは現場を熟知することから オンとオフを行ったり来たり ROI恵島良太郎氏【湯川】



 そして僕が一番ワクワクするのが「わけの分からないコミュニケーションサービス」。Facebookの次の覇権争いは恐らくLINE、WeChat、HIKEの間で繰り広げられる。これからこれらモバイルコミュニケーションサービスの間で何年間かは粛々としたシェア争いが続くだろう。(関連記事:21世紀はアジアの時代 シリコンバレーではなく日本に吹き始めた追い風【湯川】



 モバイルコミュニケーションの次はどこが主戦場になるのだろうか。電脳コイルのようなウェアラブルコンピュータなのだろうか。いやその進化は当たり前過ぎるし、大手が資金力にモノを言わせて熾烈な戦いをするだけ。その隙をぬってあたらしいコミュニケーションサービスが登場するのだろうと思う。



 そしてそれは多分、多くの人が最初は首を傾げるようなサービスになるのだと思う。その価値が分からないので競合が様子見している間に、一気に普及する。Twitterがそんな感じで普及したが、同じように「わけの分からないサービス」が登場してくるのではないかと、ワクワクしながら注意深く見守っている今日このごろである。



蛇足:オレはこう思う



 シリコンバレーのスタートアップなら、おしゃれなソーシャルでもいいと思う。だって買収してもらえるから。でも日本で買ってくれそうなところってそう多くない。



 シリコンバレーで今これが流行ってるからって理由だけで、広告目当てのおしゃれソーシャルのサービスを始めるのは危険。今時代がどう変化しているのかを見極めた上で、しっかり出口をイメージしてから製品を作るべきだと思う。Pinterestのような画像系のおしゃれサービスを作りたいという人も多いけど、日本ではどうかなあ。マネタイズ難しそうだし、どこか買収してくれるかなあ。