[読了時間:4分]

 DeNAのモバイルコミュニケーションアプリ「comm」が女優吉高由里子さんを起用したテレビ・コマーシャルを始めた。ユーザー数1億人年内達成に向け快進撃を続けるNHN Japanの「LINE」への対抗策とみられる。このことは、次の2つのポイントを明らかにしている。



 1つは、モバイル時代の覇権争いのキープレーヤーはどこも、メッセージングなどのコミュニケーションアプリが覇権争いの主戦場であると認識した、ということ。ソーシャルゲームは確かに高収益ビジネスである。とはいっても社会がゲーム愛好者で埋め尽くされるようにはならない。ゲームアプリでリーチできない層が大半である。モバイル時代の覇権を狙うのであれば、より多くのユーザーにリーチできるサービスを手がけなければならない。そう認識したからこそ、DeNAは勝負に出たわけだ。


 国内市場は確かにLINEが圧倒的に有利だが、世界のモバイルコミュニケーション市場は60億人市場ともいわれている。中国Tencentは「WeChat」で2億人を、NHN Japanが「LINE」で年内に1億人を取ったとしても、世界的に見ればまだまだ手付かずの市場だ。特に途上国ではテキストメッセージよりも音声通話機能が重要といわれる。音声通話機能に注力した「comm」にも可能性は十分にある。



 2つ目に明らかになったことは、キープレーヤーが資本力を使って本気のマーケティングに乗り出したということだ。LINEも世界の各市場におけるユーザー数の自然増に目配せしながらも、一気に市場を押さえるべきタイミングと判断した市場に対しては広告・マーケティング予算を投入している。



 

マネタイズ先送りアプリ量産時代の終焉





 この2つのポイントが明らかになった今、次の2つのシナリオの可能性がある。



 1つは、過去1,2年の間に雨後の竹の子のように登場した「マネタイズ先送り」アプリには、今後資金が集まらなくなる、ということだ。



 ユーザー数を集めればマネタイズ手法はあとからいくらでもついてくるー。Googleもそうだし、Facebookも同様の考え方で機能強化を進めてきた。目先のマネタイズを優先しユーザー獲得スピードを落とすより、一気にそれぞれの領域でのデファクトスタンダードを目指したわけだ。



 モバイル領域は、どんなサービスが主要プラットフォームになるのか。それがだれにもまだ分からなかったから、多くのスタートアップがそれぞれの領域でマネタイズ先送りアプリに挑戦してきたのだし、ベンチャーキャピタルもそうしたアプリに対して多額の出資を続けてきた。ARや写真、音声、動画などをベースにした、無料のソーシャルアプリが次々と登場してきたのが、過去1,2年のネット業界の状況だった。



 しかしテキスト・音声を中心にしたリアルタイム、もしくは準リアルタイムのコミュニケーションが次の主戦場である、という認識がキープレーヤーの間で広がり、資本力での勝負が始まった。ということは、スタートアップが徒手空拳で勝ち進むことは不可能ではないにしろ、かなり難しくなる。出資も集まりにくくなるだろう。



 もう1つの可能性のあるシナリオは、WhatsAppのFacebookへの身売りである。NHN Japan、ソフトバンク、DeNA、グリー、サイバーエージェント、Tencent・・・。この領域に参入、もしくは参入を準備しているプレーヤーはどこも大手である。ある程度のユーザー数を確保したあとで、ユーザーをゲームやポータル、EC、O2Oなどに誘導することで、幾らでもマネタイズが可能な手段を既にもっているところだ。



 開発者もそれなりの数を投入している。LINEは数十人、WeChatは数百人の開発者を抱えているといわれている。



 それに対して米WhatAppの従業員は、わずか30人といわれる。WhatsAppは副編集長のマスキンが書いているように、一部地域で急速にユーザーを伸ばしているメッセージングサービスだ。それだけの人員でアイデアや開発力では勝負を続けられたとしても、そのあとのマネタイズは単独では無理。なのでどこかに身売りする可能性がある。シリコンバレーの会社なので、FacebookがWhatsAppを買収するというシナリオも十分にある。InstagramがFacebookへの身売りを決めたのも、もはや自分たち単独で覇権を握る可能性はないと見切ったからだと思う。





蛇足:オレはこう思う



 スタートアップは今後も社会変革の旗手であり続けると思う。ただマネタイズを先送りしたアプリばかりが登場した過去1,2年のスタートアップブームはそろそろ終わりだと思う。



 これから求められるITサービス、アプリは主に次の3つの領域になるだろう。



 1.新興国、途上国の生活をITの力で改善させることができるサービス。特に教育系のサービスは有望だと思う。



 2.日本国内で台頭してきた新しい価値観に沿ったサービス。お金儲けよりやりがいのある仕事につきたい、という若者が増えてきた。こうした価値観の変化をベースにした、社会貢献、地域活性などをテーマにしたサービスは有望。儲からないかもしれないけど、儲けが目的ではないので成立すると思う。



 3.既存の業界の勢力図を一変させるようなサービス。外から見れば「ITを使えばもっと便利になるのに」と思うような業界が日本の中には山のようにある。なぜそうした業界が変わらないのかというと既得権益者が変化を拒んでいるから。そうしたしがらみを打破するようなサービスも有望だと思う。既得権益者からは嫌われるかもしれないけど・・・。