LINEがAI化に向けて大きく舵を切った。
AI化とはどういうことか。ユーザーのデータを解析して、ユーザー一人ひとりに合ったサービスを提供するということだ。
LINEには「ユーザーのデータを解析しない。土管に徹する」という設立当初からのポリシーがある。
電話や手紙同様、個人間の通信の内容を把握しない、という「通信の秘密」という考え方が、インターネット上のチャットにも適用されるかもしれないからだ。
一方で、世界のIT大手は、ユーザーのデータを解析することで、サービスの質の向上を図っている。Googleは、だれが何を検索したか知っているし、Amazonはだれが何を買ったか知っている。gmailは、まさにメールという通信の内容を解析し、メールの内容に合った広告を表示している。
LINEがAI化に二の足を踏んでいる間も、世界の強豪たちはどんどんAI化を進めている。Amazonはスピーカー型のバーチャルエージェント「Echo」で、ポストスマホ時代に向けて大きく動き出した。
LINEはAI化しなくていいのか。スマホ全盛時代が終われば、LINE自体も終わりに近づく。
それがLINEの経営陣の、ここ何年間かの大きな悩みだったのだと思う。
そしてLINEはAI化に踏み切った。
恐らく今が勝負の分かれ目。あと1,2カ月もすればAmazonが日本国内でのEchoの年内発売を発表し、サードパーティは一斉にAmazonになびく。AmazonはECだけではなく、メディアや通信にまで手を伸ばしてくる。(関連記事「日本でもAmazon Echo年内発売?既に業界は戦々恐々」)
その前に動かなければ手遅れになる。
約30年に渡ってIT記者を続けてきた自分は、これまでに何度も勝負の分かれ目を見てきた。何も手を打たずにジリ貧に陥る企業を何社見てきたことか。
今回のLINEの決断は、決して楽な決断ではなかったと思う。今回の英断に心から敬意を表したい。